くしゃみや鼻水など、つらい症状が毎年表れるスギ花粉症。根治につながり得るほぼ唯一の治療である舌下免疫療法について、第一人者の大久保公裕・日本医科大大学院教授(耳鼻咽喉科)に聞いた。
症状を一時的に抑える対症療法は、花粉症の季節になるたび治療が必要になる。これに対し免疫療法では、花粉を外敵だと認識してしまった免疫細胞に有害でないことを学習させる。長期にわたって症状を無くしたり、症状を弱くして対症療法の薬を減らしたりすることが期待できる。「7、8割の患者に効果があります」と大久保教授は話す。
免疫療法には、スギ花粉エキス製剤を注射する皮下免疫療法と、口の中に含む舌下免疫療法がある。中心になりつつあるのは、痛みが無く、頻繁な通院が必要ない舌下免疫療法だ。
症状がある時は過敏になっている可能性があるため、舌下免疫療法は症状が出ていない時に始める。具体的には花粉の飛散が終わった5、6月から冬ごろまで。
医療機関では、まず問診と検査を行い、他の病気でないかを確認する。治療に用いるのは、スギ花粉エキスを免疫細胞がわずかに反応する程度に薄め、錠剤にしたもの。口の中に1分間含んだ後で飲み込む。初回は医療機関で服用し、2回目以降は医師の指示に従い、徐々に濃度が濃くなる製剤を自身で服用する。
服用後5分間は、うがいや飲食は控える。アレルギーを引き起こしやすい激しい運動や入浴、飲酒は、2時間は避ける。
患者にとって、スギ花粉エキスはアレルギー物質。大量摂取などにより、重いアレルギー反応のアナフィラキシーが起きる危険がある。飲み忘れたから、面倒だからと、一気に服用してはいけない。
治療対象は一般的に5歳以上で、服用は毎日1回、3~5年続ける。主な副作用は喉の違和感など。重症の気管支ぜんそく患者への使用は禁じられている。
「今年花粉症がつらかった人は、治療を考えてもいいのでは」と大久保教授。長期間の服用が必要になるため、「医療機関でしっかり説明を受け、納得した上で始めましょう」と勧めている。
治療について相談できる医療機関は、錠剤を製造販売する鳥居薬品のサイト(https://www.torii―alg.jp/mapsearch/)で検索可能だ。