(1) 経済・観光活性化 切れ目ない支援に期待 コロナ禍、価格高騰「夜のまち」に追い打ち

  • 地域から問う-2023統一地方選, 特集
  • 2023年3月13日
観光客らでにぎわうぷらっとみなと市場。インバウンドの姿もある

  「マスク着用が個人の判断となり、観光客はもっと増えてくる」―。苫小牧市港町の海の駅ぷらっとみなと市場の運営組合代表理事で、飲食店を営む上原正大さん(39)は期待する。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けたこの3年余り。厳しい経営環境を余儀なくされたが、2022年度は回復傾向で、「国内客は『コロナ前』と比べても多く、苫小牧がもともと弱いインバウンド(訪日外国人旅行者)も増えた。このままいってくれたら」と願う。

   道がまとめた22年度上半期の市内観光客数は、前年同期比約1・8倍の138万人超。コロナ対策の行動自粛がなく、苫小牧やその周辺で観光イベントが約3年ぶりに復活。昨年行われた旅行割引事業、道の「どうみん割」、市の「とまとま割」なども奏功し、「安・近・短」の旅行需要が増えた。新千歳空港では22年7月に国際線旅客定期便が再開。中国本土とは直航便ゼロが続くが、復便は「コロナ前」の半数以上。インバウンドの回復も続く。

   「市内の宿泊客は昨秋からかなり戻り、冬のイベントシーズンは『コロナ前』に比べても多かった」と苫小牧ホテル旅館組合の佐藤聰組合長(57)も手応えをつかむ。市内には組合員以外も含めてホテルや旅館は14施設、1500室以上あるが、繁忙期は満室になる施設も。国の事業を活用した道の全国旅行支援は4月以降も続く予定で、「可能な限り切れ目なく続けてほしい」と期待する。

   ただ、佐藤さんが経営するホテル杉田(表町)は、コロナ禍で赤字経営を強いられた。雇用調整助成金など使える支援は申請し、無利子・無担保の民間ゼロゼロ融資も借り入れた。稼働率も年間を通せば70%程度で、「反転攻勢」は緒に就いたばかり。「苫小牧は特にビジネス客、スポーツ大会などの合宿も大事。コロナでいったん止まった観光振興の取り組みを元に戻し、企業誘致や大会誘致など経済全体を底上げすることが重要」と提言する。

   緊急事態宣言などが発令されるたび、店の明かりが消えた「夜のまち」も、エネルギーや食料などの価格高騰が追い打ちとなる中で模索を続ける。「錦町2条2丁目町内会」の青年部長、森下研史さん(42)は「客足はコロナ前と比べて70~80%ほど。ちょっとずつ戻っている」と話す。2月にはアイスキャンドルも2年ぶりに復活させ、「『夜のまち』は食文化であり、コミュニケーションの場。もっと取り組みを広げていきたい」と前を向く。

   コロナ禍で展開された国や道、市の支援事業に「感謝している」と強調しつつ、「アンテナを張っているから使える制度が多い。返済を迎えた民間ゼロゼロ融資も『返すのも大変』『借り換えはどうすればいいか』の声も聞く。周りで店を閉じた人も多く、頑張る人を後押しする施策が必要」と指摘。「北海道、苫小牧は魅力あるまち。もっとお客を呼び込める。情報をしっかり発信し、またプレミアム付き商品券のような、まちに人が戻る起爆剤を考えてほしい」と切望する。

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   23日告示の知事選を皮切りに、1カ月間にわたって繰り広げられる統一地方選を前に、経済活性化や人口減など地域課題を考える。5回連載。

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