緊張と緩和 藤沢(ふじさわ) レオ

  • ゆのみ, 特集
  • 2023年3月9日

  作品を作る日々の中でも、3月は一年で一番の繁忙期です。それは年度内に納める作品が一気に集中するためで、年明けからは次々とやって来る締め切りを意識して制作を進めます。

   新年度に自分の作品が飾られた空間で新しい春を迎えていただけることは、とてもうれしいものですから、張り切って完成図を考えます。当然制作スケジュールは非常にタイトになり、緊張しながらの毎日が続きます。

   私は息抜きがあまり得意ではないので、いつも周りに広がる自然に助けてもらっています。休憩の際、外に意識を向けてみると、鳥のさえずりが聞こえてきたり、屋根からの雪解け水の音、カサカサと枯れ葉がすれる音など、リズミカルな世界が耳に飛び込んできたりします。また少し散歩に出掛けると、雪の上にはエゾシカ、キタキツネ、ノラネコ、小鳥たちの見慣れた足跡がくっきりと残っていて、活発に動き回る姿を観察できるのはこの季節ならではの楽しみです。自然は常に動いていて、その中で私も暮らしていることを感じると、緊張していた筋肉がふっとほぐれるような感覚になり、再び制作に集中できるのです。

   毎年決まってこの時期は、緊張感が続くのですが、春の気配が漂い始め、長い冬の終わりが意識されると、無意識に体も緩み、心にもゆとりができるような気がします。春へ向かってまた前向きに活動していこうと思えるのです。

  (彫刻家・苫小牧)

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