「妹よ ふすま一枚 隔てて今 小さな寝息をたてている妹よ―」。南こうせつさんの「妹よ」が先日、ラジオから聞こえてきた。あす嫁ぐ妹への思いを静かに歌っていて、心が穏やかになった。
きょうだいは、きっと人間関係のありようを学ぶ基礎。けんかをすることは多くても我慢や助け合いを学ぶ出発点。兄と妹だけでなく姉と弟などでも、強く結ばれた関係が見えることがある。「妹には頭が上がらない―」。そんな友人の話を、うらやましく聞いた記憶がある。
厚生労働省の人口動態統計速報によると、昨年の出生数は統計を取り始めた1899年以来、初めて80万人を割り込み79万9728人だった。戦後間もない1949年の第1次ベビーブームは270万人。その世代の子の、71~74年の第2次ベビーブームも、各年200万人以上が生まれた。減少幅の大きさに驚く。
新型コロナウイルスのまん延に伴う結婚や出産の減少もあったらしい。働き手の不足、年金財政への影響、介護人材の不足など不安はいよいよ大きい。政府は少子化対策をぶち上げるが、予算倍増は掛け声ばかり。「妹よ」を口ずさみながら、きょうだいや同年代への優しさや思いやりを学び損ねた世代は、どんな社会をつくるのだろう―と不安になる。(水)