電力大手7社による4月以降の家庭向け規制料金の値上げ申請について、経済産業省は3日、直近の燃料輸入価格の低下を反映させ、引き上げ幅の圧縮を目指す方針を固めた。電気料金の原価で大きなウエートを占める燃料費の増加を抑え、家計への影響を可能な限り小さくするのが狙い。厳格に審査する期間を確保するため、引き上げ時期は5月以降にずれ込む方向だ。
東北、北陸、中国、四国、沖縄の5電力は4月から、東京と北海道の2電力は6月から、平均28~45%程度の値上げを申請。ロシアのウクライナ侵攻や急激な円安進行に伴う燃料費高騰による収益悪化が理由だ。
各社は値上げ申請の根拠となる燃料の輸入価格について、申請直前の3カ月平均で算定した。昨年11月に申請した東北など5電力は同7~9月、今年1月に申請した東京と北海道はそれぞれ昨年8~10月、同9~11月の平均値を使った。
これに対し、申請を審査する電力・ガス取引監視等委員会の専門会合は3日、平均値を昨年11月~今年1月で算定するのが妥当だと議論。この直近3カ月で燃料費を再試算したところ、北海道で225億円減、東北で139億円減など、北陸を除き各社とも申請段階から圧縮が可能との結果が出た。東京は他社からの購入電力料で2536億円圧縮できるとした。
これは、昨年10月に一時1ドル=151円台を付けた急速な円安が落ち着き、石炭や液化天然ガス(LNG)の輸入価格が昨年秋をピークに低下傾向にあるため。消費者などからの意見公募でも「ピーク時の燃料価格や円安水準で算出するのはいかがなものか」などの声が噴出している。
岸田文雄首相は2月24日、西村康稔経産相に「直近の為替や燃料価格を勘案し、4月という日程ありきでなく、厳格に審査してほしい」と指示した。詳細な燃料費の再算出には時間がかかるため、東北など5電力による4月の値上げ実施は難しい状況だ。