能登正智展(中) ガラス絵ならでは 多様な表現

  • 特集, 苫小牧市美術博物館
  • 2023年3月1日
能登正智《オリオンとイラマンテクル(狩人)》1999年、油彩・ガラス、アルミ箔(はく)、苫小牧市美術博物館蔵

  本展では、8点のガラス絵を展示しています。ガラス絵は、透明なガラスの裏面に直接絵の具を載せて描いた作品で、艶やかで宝石のような輝きを放ち、独特の魅力があります。一般的な絵画とは異なり、最初に描いた線や色が表面に見え、最後に載せた色が背面や奥行きを作り出します。

   展示作品では、始めに色を載せた部分の絵の具を削り取るように線が引かれ、その上から色が重ねられた部分、ガラスが絵の具の油分をはじき、粘り気のある模様になった部分など、小さな作品ですが、表現の見どころがたくさんあります。

   ガラス絵という技法は、13世紀末から14世紀のヨーロッパで生まれたとされ、17世紀末には中国でも制作されるようになりました。日本では少なくとも19世紀前後から長崎や江戸でびいどろ絵と呼ばれたガラス絵が制作され、近代の作家では、小出楢重(こいでならしげ)や川上澄生(かわかみすみお)などがガラス絵を制作しています。

   能登のガラス絵では、最背面(制作過程においては最後の仕上げの面)にアルミ箔(はく)を張り、輝きを増幅させるなど、ガラス絵ならではの工夫も凝らされています。

  (苫小牧市美術博物館主任学芸員 立石絵梨子)

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