能登正智展(上) 独特な色彩「能登ブルー」

  • 特集, 苫小牧市美術博物館
  • 2023年2月27日
能登正智《夜鳥渡る原野》1989年、油彩・カンバス、個人蔵

  苫小牧市美術博物館は3月12日まで、苫小牧を拠点に活動した画家能登正智(のとまさとし)氏(1922~2001年)の企画展を開いている。生誕100年を記念し、約130点を展示。太古の世界を想像力豊かに表現した油彩画や木版画、ガラス絵の力作を担当学芸員が3回にわたって解説する。

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   苫小牧市美術博物館では、3月12日まで能登正智の回顧展を開催しています。能登は稚内に生まれ、札幌を経て1941年から亡くなる2001年までの60年間苫小牧に住み、制作活動を行っていました。展覧会の準備に際し、ご家族の元で保管されていた作品群をひもとくと、その数の多さに圧倒されました。

   展覧会では、約130点の作品を展示していますが、会場に展示し切れなかった作品はまだまだあります。どの作品もとても魅力的で、しかも技法は多岐にわたります。本稿では、能登正智の油彩・ガラス絵・版画の各技法における作品の魅力について考えてみたいと思います。

   作家として最初に頭角を表した油彩画では、透明感のある色彩と知的な構成美で描く初期の抽象的な作品から、「能登ブルー」ともいうべき独特な青い色彩で、北方的詩情を感じさせるモチーフがちりばめられた作品へと、その作風は展開していきます。

   北の大地に宿る精神世界をテーマに、イマジネーション豊かに描いた作品群は自らの足で分け入った自然から得た感覚に加え、書物を通して取材した地域の歴史や伝承に着想されています。空と海、大地が混然一体となった世界に人と生き物が遊び、祈り、生きる様子は、太古の世界への憧憬が歌われているようです。あるいは、自然の力への畏怖の念を抱きながら、神々の姿を表出しているのかもしれません。

  (苫小牧市美術博物館主任学芸員 立石絵梨子)

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   午前9時半~午後5時(最終入場は同4時半)。観覧料は一般300円、高校・大学生200円、中学生以下無料。月曜休館。

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