◆下 ゼロカーボン×ゼロごみ大作戦 脱炭素まちぐるみで 2カ年かけ事業展開

  • 未来へつなぐ 苫小牧市2023年度予算, 特集
  • 2023年2月20日
市環境審議会から第4次環境基本計画策定の答申を受け取る岩倉市長(右)=2022年11月、苫小牧市役所

  苫小牧市が2050年に二酸化炭素(CO2)の実質排出量ゼロを目指す「ゼロカーボンシティ」になっていることを知っていますか―。

   市が22年3~4月に市内在住の900世帯を無作為抽出して行った「家庭の燃料等の消費節約実態調査」(312世帯回答)の設問の一つだ。岩倉博文市長が21年8月に「ゼロカーボンシティ」を宣言。すぐに庁内に横断的な組織を立ち上げ、講演会の開催などで周知活動にも取り組んだ。しかし、調査の結果、「内容も知っている」と答えた人はわずか12・82%にとどまり、市民の認知度の低さが露呈した。

   こうした中、岩倉市長は5期目最初の大作戦事業として「ゼロカーボン」を主要テーマに選んだ。大作戦は岩倉市政の象徴的な政策。ごみ減量や福祉向上など行政課題を一つ選び、まちぐるみで1年間かけた取り組みを特徴とする。だが、今回は6度目の「ゼロごみ大作戦」も組み合わせた形とし、運動期間は23~24年度の2カ年に設定した。焼却ごみ減少が脱炭素につながるとの考えからで、「市の最重要課題ゼロカーボンはごみ減量と切り離せない。市民や事業者など幅広い協力が必要で、単年度の取り組みでは足りない」。市幹部は異例の展開方針をこう説明した。

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   今回の大作戦は、3月末までに策定予定の第4次環境基本計画(23~30年度)を支柱に繰り広げる。第1期ゼロカーボン推進計画に位置付けた同計画は脱炭素や廃棄物対策、環境保全など四つの基本目標を定め、そのまま大作戦の事業に反映している。

   23年度の関連施策は62事業に及び、総事業費は1億8578万円を見込む。全体金額を押し上げる「ゼロカーボンハウス促進補助金」は、予算案に1億1187万円を計上。環境省の交付金「重点対策加速化事業」を使い、22年度当初の700万円から15倍以上も増額した。事業の目玉は一般住宅の「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH=ゼッチ)」の整備補助。ZEHは省エネ設備や再生可能エネルギーの太陽光発電などを導入し、電力消費量の収支ゼロを図る住宅で、補助額は1戸当たり55万~100万円を想定する。

   また、市内の中小企業を対象にCO2排出量調査やコンサルティングを含めた省エネ診断事業を予定。環境保全の市民意識を高める多彩な啓発イベントも企画する考えだ。

   大作戦の事業以外、公園灯や街路灯、消防庁舎、市立病院などの照明器具を消費電力の少ないLED(発光ダイオード)に。一部公用車に電気自動車を導入するなど、脱炭素関連事業への予算配分を厚くした。

   第4次環境基本計画には、30年度までに市内のCO2排出量を全体で13年度比48%減とする目標値を定める予定。市は、達成のカギを握る市民や事業者の理解を得る足掛かりに―と大作戦を見据える。市の担当者は「省エネは家計にも地球にも優しい取り組み。活動が生活を見直すきっかけにもなれば」と意気込む。

   ※室谷実、河村俊之が担当しました。

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