中心市街地の活性化―。岩倉博文市長が17年前の1期目から重視する政策分野だ。5選を果たした昨年6月の市長選では「旧サンプラザビル(旧駅前プラザエガオ)問題の解決を図り、苫小牧駅を中心とした『まちなか』の価値と存在感を高め、人が集う機会を創出する」との公約を示した。
ビル運営会社の経営破綻で2014年、大型商業施設エガオが閉鎖。”まちの顔”とも言えるJR苫小牧駅前に巨大な空きビルがそのまま放置されたまま、今年で9年を迎える。ビルを撤去し、中心街にふさわしい顔づくりの道筋を付けるのは、今期で引退する意向を示す岩倉市長にとって「積み残しの案件」だ。
重い課題の解決に向けて市は、23年度から動きを強める。都市再生コンセプトプラン推進事業として新年度一般会計予算案に1億870万円を盛り込んだ。22年度中に策定する駅前再整備構想の「苫小牧駅周辺ビジョン」を具現化し、中心街の活性化につなげたい考えだ。
再開発に必要な施設の機能や配置などを示すビジョンの案では、苫小牧駅南口周辺に▽駅前シンボル▽多世代交流・学び▽商業・にぎわい―など11のゾーンを設定。駅南口前にホテルや商業機能、体験型サイエンスパークなどを備えた複合施設を建て、近くにオフィスや住宅の機能を持つビルを建設する。また、バスターミナルを兼ねた大型立体駐車場、タクシーや一般車の乗降場となる交通広場、サテライトキャンパスの整備を示し、街を回遊する自動運転バスといった次世代型移動手段の導入も盛った。
事業を進める上では、苫小牧駅舎と一体的に整備することを検討し、JR北海道との協議を行うとしている。
市は23年度、ビジョンに基づき、具体的な整備方針を示した事業計画を作成。ハード面に限らず、にぎわい創出のイベント開催費などを盛り込んだ都市再生コンテンツ創出事業(2億1000万円)も予算案に計上した。
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再開発の具現化に向け、早ければ24年度にエガオビル解体に着手する目標も掲げている。だが、整備事業のハードルは高い。人口減少や高齢化の進展、東西への大型商業施設の分散立地―。そうした状況の中で、日常的に中心街へ人が集まるほどの魅力、利便性を高められるか―といった問題がある。ビジョンを実現するには、民間投資も欠かせず、採算性の観点から円滑に進むか不透明だ。
エガオビルの解体と跡地開発の前提条件となる一部地権者の同意もいまだ得られていない。最重要事項の一つとして岩倉市長が目指す中心街活性化は、課題が山積したままだ。
一方、商業環境の変化で活力を失った駅前中心街の再生は、地元商業者にとっても長年の願望。市商店街振興組合連合会の長山愛一郎理事長は「再開発はなかなか進まないが、市がビジョンと整備計画を作ることは評価に値する。街へ足を運ぶ人や居住人口も増え、にぎわいが戻ることを願っている」と話した。