苫小牧市の2023年度一般会計予算案は824億3400万円で、22年度当初比3・3%伸び、記録の残る1981年度以降で過去最大となった。岩倉博文市長が昨年6月の市長選で5選を果たして以降、初の本格編成の新年度予算案が最大規模となったものの、積極予算とは言い難い。資材費や燃料費などの高騰で全体経費が膨らむ見通しが背景にあるからだ。8日の予算発表会見で岩倉市長は「実のある伸びではない」と、財政を圧迫する物価高の影響を憂えた。
20年度以来、4度目の800億超規模とした一般会計の中身を見ると、歳入(収入)の約3割を占める市税は、企業の設備投資や住宅建設の底堅さを見込み、同4%増の288億6400万円とした。
一方、歳出(支出)では、主要事業費が物価高もあって同14・2%増の185億2100万円に。23年度着工予定の大型公共施設・苫小牧市民文化ホールの整備運営費(13億3800万円)をはじめ、「ゼロカーボン×ゼロごみ大作戦!」と銘打った全市的運動の事業費(700万円)、ゼロカーボン推進啓発費(730万円)、公共施設への再生可能エネルギー導入費(2000万円)など脱炭素社会の形成に向けた多様な事業予算を盛り込んだ。
この他、家族の介護や家事を担う若者をサポートするヤングケアラー支援条例制定事業(50万円)、災害対策の防災まちづくり構想策定費(1700万円)などを新規に計上。社会課題に対応する姿勢も示した。
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予算案には、物価高の荒波を受けながらも、財源を捻出しようという苦慮が見て取れる。借金に当たる市債は52億8300万円。22年度比5・7%増やさざるを得なくなり、市債残高は877億1000万円を見込んだ。いずれ返済が必要な市債残高は増加傾向にあり、将来的に政策の柔軟な実行を阻害する恐れもある。
借金を極力抑えながら事業費の財源不足を補うため、貯金に当たる財政調整基金からは10億7000万円を取り崩した。こうして何とか予算を組んだものの、基金残高は22年度末の36億4000万円から25億6000万円へ減る見通し。今後の予算編成がさらに難しくなる可能性もはらむ。
市は財政運営持続化計画(23~27年度)を作り、持続可能な市政運営を目指すとしている。しかし、人口減少の進展で収入の主軸・市税は先細りする。一方で更新期を迎える公共施設対策、駅前中心街の再開発など重要課題への対応が今後、本格的に迫られる。厳しい財政事情の改善を図り、まちの未来につなげるための課題解決へ道筋を付けられるか。今期で引退する意向を示し、政治生活の集大成と位置付ける5期目の市長の手腕が問われている。
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苫小牧市の23年度予算案について予算編成、中心市街地活性化、脱炭素対策の観点から検証する。