政府は15日、日本領空に侵入した他国の気球や無人機への対処に関し、自衛隊の武器使用基準の緩和を検討する方針を明らかにした。中国の偵察用気球と推定される飛行物体の領空侵犯を踏まえた。これまで有人機対応を念頭に正当防衛や緊急避難のケースに限って撃墜可能としてきたが、ドローンの飛来にも備えるため対象を広げる考えだ。
自衛隊法84条は、領空侵犯した航空機に対し必要な措置を講じることができると規定。浜田靖一防衛相は7日の記者会見で「対領空侵犯措置の任務に当たる自衛隊機は武器の使用ができる」と述べ、自衛隊法に基づき撃墜する可能性に触れた。ただ、気球やドローンによる偵察が武器使用の要件に当てはまるか、現行の武器使用基準は明確に示していない。
防衛省の増田和夫防衛政策局長は15日の自民党安全保障調査会などの合同会議で、領空侵犯に関する武器使用基準が有人機への正当防衛や緊急避難を想定していたと指摘。「今回は無人機だ。気球に限らず従来と違う対応を検討する段階に来ている」と説明した。
合同会議後、同調査会の木原稔幹事長は記者団に「気球(への対応)はある意味、一歩踏み込む形になる」と述べた。
これに関連し、外務省の森健良事務次官は14日、米ワシントンでシャーマン国務副長官と会談。気球について緊密に連携していくことを確認した。一方、中国外務省の汪文斌副報道局長は15日の会見で、日本政府の「推定」に対し、「確実な証拠がない状況下で中国を攻撃することには断固反対だ」と強く反発した。
防衛省は14日夜、2019年11月に鹿児島県、20年6月に宮城県、21年9月に青森県の上空に飛来した気球が中国の無人偵察用気球と「強く推定される」と発表した。松野博一官房長官は15日の会見で、中国政府に事実確認と再発防止を要請したと強調。推定の根拠については「分析を重ねた結果」と述べるにとどめた。