東京五輪・パラリンピックのテスト大会計画立案業務を巡る入札談合事件で、東京地検特捜部は8日、競技会場ごとに落札予定企業を決定したとして、独禁法違反(不当な取引制限)容疑で大会組織委員会大会運営局の元次長森泰夫(55)、広告最大手「電通」スポーツ局局長補だった逸見晃治(55)両容疑者ら4人を逮捕した。関係者によると、両容疑者は容疑を認めているという。
組織委元理事の高橋治之被告(78)=受託収賄罪で起訴=が関与したとされるスポンサー契約を巡る汚職事件に続き、会場運営でも組織委側の刑事責任が問われる事態に発展した。
計画立案業務を落札した各社はテスト大会や本大会運営業務を随意契約で受注し、事業規模は計約400億円に上った。会場運営を取り仕切った森容疑者らが本大会を視野に談合を主導したとみられ、公正取引委員会と共に調べている特捜部は計画立案から本大会の会場運営までを一体の取引とみなし立件した。
他に逮捕されたのは、イベント大手「セレスポ」専務の鎌田義次(59)、同「フジクリエイティブコーポレーション」(FCC)専務の藤野昌彦(63)両容疑者。特捜部は公取委と合同で両社本社を捜索したほか、森容疑者らの自宅も家宅捜索した。
発表によると、森容疑者らは各社の担当者と共謀し、組織委が発注するテスト大会計画立案業務委託や本大会などの運営業務委託について、2018年2~7月に各社の希望を考慮して受注予定企業を決定し、競争を制限した疑い。
計画立案業務の入札は同5~8月に26件実施され、電通やセレスポなど9社と、セレスポとFCCの共同企業体が計5億円余りで落札し、広告大手「大広」などを除く7社が談合に関与。事前の合意により、大半が落札企業単独の「1社応札」だった。
関係者によると、その後のテスト大会や本大会の運営業務について、組織委は計画立案業務を落札した企業に発注すると事前に説明。森容疑者は逸見容疑者と共に受注調整を主導したとみられ、希望する社が競合した場合は「そこは既に他社に決まっている」などと伝え、入札参加を辞退するよう促すこともあったという。
森、逸見両容疑者はこれまでの特捜部の任意聴取に談合の認識を否定していたが、最近になって大筋で認めた。一方、鎌田、藤野両容疑者は一貫して否認していた。