9 苫小牧信用金庫 小林(こばやし) 一夫(かずお) 理事長 地域の業況回復傾向 苫小牧駅周辺ビジョンを後押し

  • 企業トップに聞く2023, 特集
  • 2023年1月20日

  ―昨年の地域経済を振り返って。

   「続く新型コロナウイルス流行に加え、原材料・エネルギー価格の高騰、半導体といった部品の供給不足など内外の経済情勢が一層厳しさを増した。製造・運輸業を中心とする苫小牧地域は、他の地域に比べ観光業への依存度が低く、新型コロナの影響は相対的に大きくなかった。しかし、製造業などでは、原材料の高騰でコストが上昇し、先行きに厳しい見方を示す企業が多い。コロナによる行動制限がなくなり、人流が戻りつつあることで地域全体の業況は回復傾向にあるが、もともと経営不振だった企業の業績がさらに悪化する二極化が進んでいるように見える」

   ―苫信の経営概況などについて。

   「2022年12月末時点の預金等残高は5272億円で前年比130億円増、貸出金残高は2493億円で48億円増となった。『ゼロゼロ融資』などの公的支援で膨らんだ一昨年末に比べ、勢いは鈍化している。昨年10月からコープさっぽろと連携し、移動販売車にATM(現金自動預払機)を搭載する取り組みを始めた。日高、平取、むかわ、厚真の4町で運行して約2カ月たったが、特にATMがない日高地区の方々に好評のようだ。採算が取れない部分もあるが、地域貢献として継続したい。新たな住宅ローンのキャンペーンも始め、現役世代への営業基盤を拡大する取り組みを続けている」

   ―脱炭素化への取り組みは。

   「当金庫に対し取引先から、脱炭素に関する具体的な相談や要請などは今のところない。率直な感想として脱炭素化は行政、大手企業主導のプロジェクトにとどまり、地場の中小企業や一般市民を巻き込んだ取り組みにはなっていないのだろう。今後は中小企業であっても、取引先の大企業から脱炭素の対策を求められる可能性があり、当金庫としてもニーズを素早くキャッチし、的確な支援につなげたい。また、当金庫は太陽光発電事業へ累計50億円以上の投資に加え、運用面で20年度以降、環境配慮の事業を資金使途とするSDGs・ESG債への投資を拡大しているところだ」

  ―今年の展望について。

   「ビジネスモデルや将来性を融資の基準とする『事業性評価』の定着と活用、マネーロンダリング(資金洗浄)・テロ資金供与対策の強化、中途採用の積極化などはこれまで通り取り組んでいく。今年は創立75周年であり、何らかの記念行事を考えている。結婚相談所や本店前で毎年開催している『まち市』も、コロナ次第ではあるが、積極的に取り組んで地域に貢献していきたい。中心街の活性化を目指す市の苫小牧駅周辺ビジョンについても、関係者と協力しながら後押ししたい」

  メモ

   1948年9月に設立。苫小牧市に本店を置き、東胆振や日高管内、千歳市、札幌市で27支店を運営する。9年ぶりの新規出店として昨年10月、札幌市に豊平支店を開設した。

過去30日間の紙面が閲覧可能です。