「またすぐ会えるから、元気でね」「はいはい、分かりましたよ」。15年ほど続いた祖母との暮らしは、昨年12月のグループホーム入所を機に幕を閉じた。
ついの住み家に―と新居を建てたのは7年前。「あなたの人生があるんだから、一緒に暮らす必要はない。このままでいい」と祖母の承諾を得られないまま、彼女が半世紀近く過ごした風呂なし、洗濯機なしの平屋を解体した上に新居を構えた。
それがまずかったのかもしれない。アルツハイマー型認知症は最後まで新居を彼女の家と認めなかった。「迎えに来てくれたの」。仕事から帰宅するたび、身支度万端の祖母が玄関先に立つ。入所先でも昼すぎになると身支度をするようで、癖を付けてしまったことに申し訳なさが募る。
新年早々、入所先から祖母の近況を知らせる写真付きの便りが届いた。頬に手を当て満面の笑みを浮かべる姿。「普段はお話好きな同居者とお話しされてることが多いです」。ほっとした。 (北)