3 居心地良いが願望も 北洋大学2年生 髙橋(たかはし) こはくさん(20)

  • まちを見詰めて~苫小牧市制施行75年, 特集
  • 2023年1月16日
「自然に囲まれたまちが魅力的」と語る髙橋こはくさん

  空が広くて、星が近い―。苫小牧で生活を始めて2年が過ぎた。実家のある埼玉は高い建物ばかりでせわしないが、苫小牧は空気が澄んでいて静か。「バスケットボールに打ち込むにはいい場所。自分にはこの町が合っている」と穏やかな表情でまちを眺める。

   さいたま市出身。小学2年生からバスケットボールクラブに入り、名門の埼玉栄中学校、高校を卒業。高校2年の冬に北洋大学のバスケ部顧問に声を掛けられ、2021年に同大入学。苫小牧市に移り住んだ。

   大学のパンフレットを見て初めて、苫小牧市(錦西町)にあると知った。海に面し、空港から近い―という情報のみで来苫。「(苫小牧から)白老方面に国道36号を走ったときの景色がきれいで、感動した。ここで暮らせることにわくわくした」と振り返る。

   しかし、実際に住んで分かったことも多々ある。風が強い▽雪が少ない▽大学の周りに商業施設や飲食店があまりない▽バスの本数が少ない―ことだ。

   大学から徒歩20分ほどの場所に住み、1年目は自転車で通っていたが、「向かい風がすごい。こんなに強いとは」と驚いた。一方、雪国のイメージを抱いていたため雪の少なさは意外だった。バスだけでは遊びに行ける範囲が限られ、今年6月には車を購入した。

   不便なこともあるが、居心地の良さも実感した。1年目に帰省したとき、「都心のせわしなさから、早く苫小牧に帰りたいと思った」と話す。振り返れば、毎年正月に足を運んでいた茨城県日立市の母親の実家にそっくり。「日立は海沿いの町で自然が豊か。苫小牧と似ている」と思いをはせる。

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   「市内東部と西部では差がある」と感じる。東部はイオンモール苫小牧店をはじめとしたショッピングモールがあり、新興住宅も多い。若い人が多数いる印象。西部は昔からの一軒家が多く、比較的高齢な人が多いイメージ。「横に長い町なので、東部と同じように西部にも大きな商業施設があれば」と願望を語る。大学の周りも寂しい雰囲気が漂っており、「現にバスケ部は私の下に一人も後輩がいない」と嘆く。

   町の情報発信力の弱さも課題に挙げる。SNS(インターネット交流サイト)で「苫小牧」と検索しても、あまり魅力が伝わってこない。「もっと自然をウリにするとか、いろんな店があることを発信すればいいのに」ともどかしく思う。「イベントもひっそりとやっている感じで、住んでいる私でも知らない」。さいたま市にいた頃は「知らない」という感覚を味わったことがなかった。「もっと市民も発信し、拡散してほしい」と願う。

   隠れた、魅力あるところはもっとある―。そう思いながら毎日を送っている。

  (樋口葵)

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