苫小牧市中学生主張発表大会(1) 最優秀賞 「違うことも…」 勇払中学校2年 大町 日南さん

  • 特集, 苫小牧市中学生主張発表大会
  • 2023年1月11日

  「ねえ日南、あの子最近、うるさくない」

  ある日、友達が聞いてきた。

   「前までは仲良くしてきたけど、最近すごくうるさいし、うざいんだよね」

   あの子のことをうるさいと思ったことはないし、大切な友達だ。しかし、止まらない友達への悪口に嫌気がさして、つい同意してしまった。自分で放った言葉が信じられなかった。本心ではなかったのに。

   もしあの時、自分の考えを言うことができていたら…。そんなことを考えるようになった。自分の考えを言うのは怖かったし、伝えて良い方向へ向いていくとは思えなかった。悪口に同意して傷つくのは私だけではない。頭の中では分かっていても本心を伝えることはできなかった。

   ある日の授業中、問題の答えを聞かれた。そこには、堂々と意見を言う自分がいた。考えが違っていても意見を言う授業中の自分と友達どうしだと言えなくなる自分はどう違うのだろうか。授業には答えがある。最初は違っていても、最終的には同じ答えへとまとまっていき、みんな同じになる。同じでさえいれば…。わけの分からない安心感が、自分の意見を言う場面で生まれる。同じでないといけない。同じであることが当たり前。そんな雰囲気があると、違っていたら言い出すことはできない。そんな当たり前の中では、相手を知ることはできないし、自分を伝えることもできない。「関係が壊れるのが嫌だ」「相手に否定されるのが怖い」そのような気持ちがあると意見を言うことができなくなる。

   でも、そのような関わりの中でも意見を言える相手がいる。それは家族や、気の置けない友達だ。そこに共通しているのは深い信頼があることだ。深い信頼は相手をしっかりわかっている、そして相手にわかってもらえているというお互いの理解から生まれているのではないだろうか。理解があると、違うことも言える関係ができる。同じであることは当たり前のことなんかではない。

   しかし、みんなに理解されない、考え方が違う、そんな理由で生きづらさを感じる人もたくさんいる。自分だけ違う考えを持ち、周りになじめず孤独だと感じる人がいる。

   その結果、学校に行けなくなってしまい、自分から人間関係を絶ってしまうこともある。誰とも話せない、顔も見られない、たとえ自分から切り離してしまっていたとしても、そんな状況はとても悲しくて寂しい。でも、その人の本心を見つけてあげて、素直な気持ちを伝えられるようにすると切れた関係を戻す小さなきっかけになると思う。自分を伝える、というのはとても勇気のいることだ。それでも自分の考えを伝えた時、相手の考えを聞いた時、言って良かった、知って良かったと思える理解が、人と人の間にある生きづらさを消してくれると信じる。自分と考えが違うことも相手を知りたいと思う好奇心さえあれば理解は生まれる。相手と自分を受け入れる、それが大切であり、本当の理解なのだ。

   あの日、戸惑い同意をしてしまった自分はもういない。本当の理解を知ることができたからだ。本当の理解、それを胸に刻んで、これからも自分の考えに誇りを持って生きていきたい。

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   第46回苫小牧市中学生主張発表大会(市教育委員会主催、市中学校長会共催、2022年12月3日、市文化交流センター)で、市内の各中学校の代表生徒がそれぞれの思いを発表した。最優秀賞、優秀賞、優良賞、努力賞に選ばれた作品を紹介する。

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