1 出光興産北海道製油所 山岸(やまぎし) 孝司(こうじ) 所長 「変革をカタチに」 風力発電 CN社会実装へ第一歩

  • 企業トップに聞く2023, 特集
  • 2023年1月10日

  ―昨年を振り返って。

   「大きな出来事が三つ。安全運転操業の維持で大事な定期補修工事を6~8月に行った。新型コロナウイルス感染防止対策を徹底し、クラスター(感染者集団)を起こさずにやり遂げ、働き方改革にも挑戦し、業務時間約4000時間を削減。桜並木をはじめ『緑』に関する地道な活動が認められ、『みどりの社会貢献賞』も頂いた。カーボンニュートラル(CN、温室効果ガスの排出ゼロ)では、道や市、地元企業と議論を重ね、方向性が見えたのは大きな成果だった」

   ―昨年11月発表の中期経営計画(2023~25年度)で、北海道製油所のCN展望を公表した。

   「北海道の豊富な再生可能エネルギーを活用した水素製造、二酸化炭素ガスの回収、合成燃料の製造を目指す。その一つとして再生可能電力の風力発電を考えており、昨年12月に風況観測を始めた。CNの社会実装に向けた第一歩。計画にある『変革をカタチに』を大事に、合成燃料を社会実装につなげる覚悟だ。ただ、弊社1社では不可能で、これまでにないような連携が必要。ありとあらゆる切り口を検討していく」

   ―一方、出光グループは30年までに原油精製能力を1日当たり30万バレル削減する方針も示した。

   「12万バレルは(停止発表済みの)山口製油所で、残り18万バレルは各地の積み上げ。どこかの拠点を閉めることはなく、北海道製油所も対象にならない。北日本で石油製品、液体燃料は極めて重要で、CN実現でも人々の暮らしを支える大事なエネルギー源と想定している。CN液体合成燃料を造れば、今のインフラをそのまま使え、皆さんの暮らしも維持できる」

   ―本道唯一の製油所として不可欠な存在だ。

   「軸足は安全安定供給だが、昨年はナフサ漏れなど、設備トラブルがあった。苫小牧は塩害が強く、設備がだんだん腐食するため点検、補修しているが、完全ではなかった。徹底的に専門家の意見を交え、デジタル技術も活用し、網羅的で緻密かつ効果的に保安を強化する。一昨年からデジタルトランスフォーメーション(DX)チームを結成し、デジタル化を推進している。ドローン(小型無人飛行機)を使えば、高所点検も厳しい人力からデジタルに代えられる。23年度はいろんなことを実装し、現場で活用していく」

   ―9月に操業50周年の節目を迎える。

   「石油製品の安定供給を通して苫小牧市民、北海道民と接してきた。途中にタンク火災をはじめ、反省すべき火災や爆発事故を起こしたが、皆さまの温かいご支援、ご指導で、保安の強化や設備の改善を進められた。皆さまと成長してきた50年間で、心から感謝を申し上げたい。コロナ感染状況を見ながらになるが、皆さまに楽しんでもらえる事業を考えたい」

       ◇

   2023年のスタートに合わせ、苫小牧市に立地する企業のトップに新年の抱負や展望、課題、脱炭素社会実現への取り組みなどを聞いた。

 メモ 北海道、東北、北陸などに石油製品を供給。原油精製能力は1日当たり15万バレル。1年間で札幌ドーム約5・5杯分。

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