「今回で最後になります」―。安平、むかわ両町では、小中学校計5校が来年3月で閉校となるため、学校行事の取材に足を運ぶたびにこの言葉を聞き、記事にすることが多かった。
安平町の早来地区では来年春、胆振東部地震で被災した早来中学校の再建に合わせて小中一貫の義務教育学校「早来学園」が開校。これに伴い同地区の安平、遠浅、早来の3小学校と早来中学校が閉校し、統合される。むかわ町でも宮戸小学校が児童数の減少により、115年の歴史に幕を下ろすことが決まっている。
各校の残る時間をできる限り記録していこうと、いろんな場面に足を運んだ。生徒や保護者、地域住民…誰と話をしても惜別の思いがひしひしと伝わってきた。特に小規模の学校では、子どもたち一人ひとりが主役のように輝いており、それを見守る保護者や教職員、地域住民には温かさを感じた。だから、余計に思いが心に染みた。
ただこの1年、今まで以上に特別な思いで授業や学校行事に臨む子どもたちの姿は、決して「悲しい」「寂しい」だけではないと感じた。各校に掲げられている看板や横断幕などには、地域と共に長きにわたる歴史を刻んできた学びやへの「ありがとう」の言葉が刻まれていた。
この年末、これから始まる学校生活に向けて目標を立てたり、夢を膨らませたりする子どもたちを取材する中で「寂しさ」はいつしか新たな「楽しみ」や「希望」に変わっていくような気がした。
2023年春―。子どもたちは「母校」で刻んだ思い出を胸に、新たなステージへと踏み出していくことになる。そこに至るまでの残された時間をできる限り見届け、関係者と共に拍手で送り出してあげられたらと思っている。 (石川鉄也)
終わり