4 「仙台藩白老元陣屋」北海道遺産に 町民らの保存活動結実 若い力取り込み 郷土の史跡守る

  • この1年 2022, 特集
  • 2022年12月20日
白老元陣屋が今年10月、北海道遺産に選ばれ、町内に喜びの声が広がった

  白老町陣屋町の「仙台藩白老元陣屋」が10月、道とNPO法人北海道遺産協議会(札幌市)によって「北海道遺産」に選定された。町と町民による保存活用の活動が実を結び、まちを沸かせた。胆振管内の北海道遺産は、むかわ町穂別の古生物化石群などに続く5件目となった。

   陣屋は江戸時代末期の北方警備の拠点。現在、道内に24カ所が存在しているが、白老元陣屋とも呼ばれる国指定史跡「白老仙台藩陣屋跡」は道内最大級。本陣や長屋など仙台藩士が常駐した建物の跡、土塁、堀などが残り、当時の姿を今に伝える貴重な文化財だ。白老が誇る史跡を守り、まちの振興に生かすため、仙台藩白老元陣屋資料館と町民ボランティア団体の同資料館友の会は、今年も連携した活動に取り組んできた。

   そうした中で白老元陣屋が北海道遺産に選ばれた吉報に、関係者の間で歓喜の声が広がった。資料館の武永真館長(59)は「友の会の皆さんとの活動も含めて評価された」とし、「史跡の魅力を広く伝える活動を進めたい」と意気込んだ。友の会の川西政幸会長(79)も「先輩の努力や有志の協力が結実した」と喜んだ。11月に札幌市内で行われた選定証授与式で、同協議会の石森秀三会長から証書を受け取った戸田安彦町長は、改めてまちの活性化に生かす思いを強めた。

   白老元陣屋は、幕末期の北海道の歴史を知る上で重要な遺構。選定に関わった同協議会の池ノ上真一理事(49)=北海商科大教授=は今月4日、町内で行った講演で元陣屋の存在意義を語ったほか、官民連携による利活用の取り組みを高く評価した。

   その上で「北海道遺産としての価値を高め、人と地域の幸福度の向上につなげることが大切だ」と訴えた。

   白老元陣屋が北海道遺産になるのは、関係者の間で長年にわたる悲願だった。実現の一翼を担った友の会は、資料館や遺構のガイド活動などにいっそう意欲を高めている。今年は白老東高校2年生の4人をガイドのメンバーに加えた。高校生が資料館でガイドを務めるのは、1984年のオープン以降、初となった。

   来館者に展示物を案内した加藤雫さん(17)は「人前で話す楽しさを実感できた」と話した。同会はさらに高校生ガイドを受け入れ、若い力を取り込みながら郷土の史跡を未来につなぐ活動に力を入れる。

   町と資料館は今月23日、町コミュニティセンターで「史跡白老仙台藩陣屋跡のこれから」と題したシンポジウムを開く。町民と共に史跡の生かし方を考える場としたい考えだ。

   武永館長は「名実ともに北海道の北方警備史を伝える重要拠点を担うことになった。郷土の歴史を語り継ぎ、次世代に引き継ぐ大切さを共有していきたい」と話し、資料館の前に広がる北海道遺産の史跡に目を細めた。

 (半澤孝平)

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