今年6月、苫小牧市の高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合)が30%に達した。統計が残る1983年9月以降では初めてで、市民のおよそ3人に1人が高齢者となった。”若いまち”と呼ばれた苫小牧にも超高齢化の波が押し寄せている。
介護を必要とする人も増えている。要介護・要支援認定を受けた65歳以上の市民は2021年11月末時点で9008人。今年の同月末時点は9174人と、1年間で166人増えた。10年前と比べれば、約2700人も多くなり、年を取っても長く健康に過ごせるよう、市は今年も介護予防に力を入れた。
市民が指導者として関わる「シルバーリハビリ(シルリハ)体操」もその一つ。3年目となった今年、新たに20人の体操指導士を養成し、活動を後押しした。指導士の中には、シルリハを取り入れた地域サロンの立ち上げや、小規模多機能型居宅介護施設などで体操指導に取り組む人も現れた。市介護福祉課は「コロナ禍で思うように事業を進められなかったが、今年はシルリハを通じ、市民が介護予防の意識を高める機会を増やすことができた」と手応えを口にした。
高齢化が進展する中で市は、07年から養成を続け、今月9日で3万人に到達した認知症サポーターにも改めて注目。サポーターで構成する「認知症見守りたい」を高齢社会を支える一つの体制と捉え、買い物同行やごみ出し支援など、より具体的な行動につなげる検討にも着手した。
高校生たちも対策に動いた。11月にはエレベーターのない住吉町の市営住宅で、灯油が入った重いポリタンクを高齢者宅まで運ぶボランティア活動を始めた。高齢市民の暮らしを手助けする市社会福祉協議会の「だけボラ」事業の一環で、担い手は苫小牧東高校のアイスホッケー部と野球部の部員。若い力を地域福祉に生かす取り組みは、市内外の福祉関係者の注目を集めた。
地域の支え合い活動が加速した一方、介護現場では担い手不足がより深刻化した。介護人材を確保できず、通所や居宅介護サービスを提供できなくなるケースが相次ぎ、4月から11月末までの7カ月間に3事業所が事業を廃止した。さらに今月内で訪問介護サービスをやめる事業所もある。
対策として市は介護現場で働きたい人を対象に、基礎研修や実習の場を用意するマッチング事業を今年も展開。参加した20人程度が介護事業所に就職する見込みで、市はいっそう事業に力を注ぐ考えだ。
しかし、人材不足はなかなか解消されず、サービスの需要と供給のアンバランスが続いている。事業所の中には、特定技能資格を持つ外国人の受け入れに目を向けるところも出始めた。市は「働いていない有資格者の掘り起こしなど、今は市ができることをこつこつと続けるしかない」と頭を悩ませる。
(姉歯百合子)