「子どもたちのリアルな性の話が、私たち大人に届かなくなってきている。子どもたちが力を付け、自ら正しい選択ができるようにしなければならない」
今年、市内の中学校や高校で性教育に携わる担当教員を集めた市主催の会議で、教育現場から上がった意見だ。参加者の多くは養護教諭。日ごろから、子どもたちが抱える体と心の悩みや不安に向き合っているプロだ。そうした教諭たちにさえ、子どもが性にまつわる困り事を話さなくなっている現実に、記者としても危機感を覚えた。
「妊娠の経過は取り扱わないものとする」という学習指導要領の規定が足かせとなり、性教育の中で「性感染症」や「人工妊娠中絶」などの語句を用いることができずに困っている―と訴える教員も。「インターネットの情報をうのみにしている子どもも多い。どうしたらいいのか」と困惑の声も上がった。
しかし、子どもたち自身は、大人が感じている以上に性教育の重要性を理解しているのではないだろうか。開成中学校の3年生を対象にした性教育講演会の取材を通じ、そう実感した。
講師は市の保健師。性感染症や性的少数者などの講話に加え、「好きになるってどういうこと?」というテーマで意見を交わした。少し照れながらも、ちゃかしたりふざけたりせず懸命に話し合う生徒たちの姿に、性に関する学びへの真剣さを感じた。
授業後、生徒の1人が語った感想も印象的だ。「これまでは、あまり性の話をしてはいけないのかと思っていたけど、性は否定的なものではないと感じた」
子どもを性暴力から守るため2023年度、全国の学校で「生命の安全教育」が始まる。これを機に、学校現場や家庭での性教育の充実が進むことを願う。
(姉歯百合子)