3 マナー守り安全に釣り 誰もが楽しめる環境

  • 特集, 規制から開放へ 釣り人集う防波堤
  • 2022年12月7日
広くきれいな釣り場。高い胸壁が季節風を遮る。安全で心地よく釣りを楽しめる

  苫小牧港は苫小牧港管理組合が経営する。その管理組合から施設の使用許可を得て、地元の釣り愛好者と日本釣振興会でつくる社団法人、苫小牧港釣り文化振興協会(明村享会長)が東港・一本防波堤の釣り施設を管理運営する。行政から釣り場の運営に補助金や助成などの支援はない。運営は収支の均衡が必須だ。

   有料の釣り防波堤は道内初だけに悩ましかったのが料金設定。先発の釣り文化振興モデル港や、それ以前の海上釣り施設など類似例は本州にあるものの、そこではマダイやサワラ、アオリイカなど高級な魚たちを狙える。同列で考えるには違和感がある。

   振興協会は初期投資分を除いた人件費、救助艇維持費など経費を試算。1日券で大人1000円、中高生500円、小学生300円、駐車料金1台500円と設定した。「高いか、安いか、釣り人の判断はふたを開けてみないと分からない」。行政を含む関係者は一様に不安感を抱いていた。

   実際は入場者数が月ごとに増え、6月には軌道に乗る。料金に対する不満や要望もシーズンを通してほとんどなかった。森田忠志業務執行理事は「有料の釣り、それも駐車代と合わせて大人1人1500円が受け入れられている」とみる。しかも「料金に見合う釣果の有無だけに評価のものさしを当ててない」とも感じた。料金収入ではスタッフの人件費、救助艇や仮設トイレの維持費、警備・通信費などを賄う。法人の利益はみない。清潔で安全な釣り場の維持管理に充てられる経費のみだ。

   オープン時から数回、一本防波堤を訪れている札幌市の釣りブロガー・大武ユウキさんは「釣果も重要だけれど、場所取りがなく、ごみがなく、マナーが守られているのは評価できる。安い方がいいが、1500円は高くはない」と感想を語った。インターネットの動画投稿サイトにチャンネルを開設し一本防波堤の情報も発信している。

   ”釣り女子”の娘と来場した苫小牧市内の公務員(55)も「安全が確保されている。女性も安心して楽しめるし、沖に相当突き出ているから釣り場にワクワク感がある。また来たいと思える」と好感を語った。

   一本防波堤では、注意事項を徹底するため入場誓約書の提出を求めている。これを基に管理組合がまとめた4~8月の来場者の傾向を見ると、女性が14%だった。海岸や護岸などよりも女性の釣り人は多そう。地域別では札幌市が48%、千歳市が10%。本州の来場者もいた。日常的に海岸などで無料で釣りができる地元の苫小牧は1割程度だ。

   誰もが安心して釣りを楽しめる環境。それに見合う料金の釣り場にニーズがうかがえる。相応の負担をして、安全と安心を感じる場所でマナーを守りながら釣り体験を楽しむという、一つの釣り文化の芽だ。

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