政府は1日、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題を受けた被害者救済新法の法案を持ち回り閣議で決定し、国会に提出した。10日の会期末までの成立を目指す。
新法の規制対象は個人から法人や団体への寄付全般で、宗教法人に限らず、社団や財団法人も含まれる。法人側が寄付を勧誘する際、霊感で不安をあおり、「寄付が必要不可欠」として個人を困惑させる行為などを禁止する。
霊感を用いた寄付の場合は、消費者契約法改正案に合わせ、寄付の意思表示から10年、被害に気付いてから3年以内であれば取り消せる。資金を調達するため、生活に必要な事業用施設や住宅を売却したり、借金するように要求したりすることも禁じた。
禁止行為を行ったと認められ、今後も継続すると予測される場合、消費者庁は勧告や命令、公表などの行政処分を下せる。処分を受けても改善されない場合は、1年以下の拘禁刑や100万円以下の罰金といった刑事罰を科す。
信者の家族を救済するため、生活費や養育費などの範囲で、家族が本人に代わって寄付取り消しを求められる特例を設けた。
寄付を勧誘する法人側には、寄付者への「配慮義務」を求める。個人の自由意思を抑圧して適切な判断が困難な状態に陥らせる、いわゆる「マインドコントロール」や、個人やその家族の生活維持を困難にすることがないよう要請する。
旧統一教会問題を巡っては、印鑑やつぼの購入契約から、悪質な寄付要求へと被害実態が移っているとの指摘があった。同庁の有識者検討会も10月、報告書で「寄付の要求などに関する一般的な禁止規範や法制化に向けた検討を行うべきだ」と提言していた。
同庁の新井ゆたか長官は1日の定例記者会見で「今回の新法は消費者契約法改正案などと併せ、被害者救済や未然防止に資する」と強調した。