膀胱(ぼうこう)がんのため27日に73歳で亡くなった映画監督の崔洋一さん。かつてむかわ町穂別地区を舞台に高齢者を主役にした映画シリーズ「田んぼdeミュージカル」で総合指導を担うなど、町民とも交流があった。地元関係者から故人をしのぶ声が上がっている。また、12月4日には苫小牧市内で追悼上映会を予定している。
崔さんは、穂別地区のお年寄りを中心とした映画「田んぼdeミュージカル」を制作。今年5月には作品を懐かしんでもらおうと町内で上映会が行われ、トークショーでは東胆振の代表的詩人で旧穂別町職員だった故斉藤征義氏との思い出を振り返ったほか、今後に向けて「戦争が生み出す人間物語をつくっていけたら」と語っていた。
当時スタッフとして携わっていた町内穂別の農家、中澤十四三さん(65)は「20年来のつながりで映画作りの指導をしていただき、家族のような付き合いをしてきた」と話す。「地域の生活文化活動の発展に貢献した方。大きな宝物を失った」と悲しみ、他のメンバーと共に崔さんの死を悼んだ。
また、町有林への植樹権を贈るマザーズ・フォレスト賞の受賞者でもあり、3年ぶりに開かれた町穂別ふるさとの森づくり実行委員会が主催する町民植樹祭(町穂別ニサナイ地区町有林)にも参加していた。実行委員長を務める苫小牧広域森林組合の小坂利政組合長は「地域への貢献、努力への報いとして森林に証しを残そうとした矢先。本当に残念だ」と肩を落とす。「これまで町に明るい話題を提供してくれたことに感謝したい」と語った。
地元のイベントで一緒に過ごした町議会の野田省一議長は「映画を作った時の話を聞かせていただいていた。今年、お見えになった時は歩くのも大変そうだった。まだ大丈夫だと思っていたが」と残念がり、「作品は永遠に引き継がれていく。魂は残っている」としのんだ。