岸田文雄首相は20日、「政治とカネ」を巡る問題が次々に表面化した寺田稔総務相と首相公邸で会い、辞表を受理した。事実上の更迭。野党が追及を強めており、続投させれば国会審議への影響は避けられないと判断した。今国会で3人の閣僚が交代する異例の事態で、政権運営は一段と厳しい状況に陥った。
後任には民主党政権で外相を務めた松本剛明衆院議員(麻生派)を充てる方針を固めた。21日に皇居での認証式を経て就任する。
首相は辞表受理後、記者団に対し、2022年度第2次補正予算案や世界平和統一家庭連合(旧統一教会)関連の被害者救済新法などを挙げ、「重要課題に一つ一つ答えを出すことを最優先する考えから辞任を認めた」と説明。相次ぐ閣僚辞任に「深くおわび申し上げる。私自身の任命責任を重く受け止めている」と語った。
総務相は政治資金の所管閣僚。寺田氏は記者団に「政策を前に進めたいという思いは持っていたが、私のいろいろな問題が支障となる悪影響の方が勝った」と語った。
寺田氏を巡っては、妻が代表を務める政治団体がスタッフに支払う報酬の源泉徴収票を発行せず「脱税」の可能性を指摘されたほか、関係する政治団体が故人を会計責任者にしていた問題が浮上。16日には、選挙運動費用収支報告書に関する公職選挙法違反(虚偽記載)の疑いが報じられた。
首相はタイでの19日の記者会見で、寺田氏の進退について「難しい仕事を全てに優先させるためにどうあるべきか、首相として判断したい」と語った。交代させなければ野党の追及は一段と激しさを増し、今国会成立を期す被害者救済新法や、21日に始まる補正予算案審議に影響するのは必至の情勢だった。
自民党内では寺田氏の辞任論が拡大。山際大志郎前経済再生担当相、葉梨康弘前法相の更迭が後手に回った経緯に加え、寺田、葉梨両氏が岸田派所属であることから、首相には自らの責任を問われる事態を避けたい思惑があったとみられる。