北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は16日、ポーランドに15日に着弾したミサイルについて「ウクライナの防空ミサイルによって引き起こされた可能性が高い」との見解を明らかにした。また「ロシアがNATOに対する攻撃的な軍事行動を計画している兆候はない」と明言し、ロシアとの直接衝突につながる危機ではないとの認識を示した。
ミサイルは15日午後(日本時間同)、ウクライナ国境に近いポーランド東部プシェボドフに着弾し、市民2人が死亡した。2月のロシアによるウクライナ侵攻開始以降、NATO加盟国内にミサイルが撃ち込まれ、犠牲者が出たのは初めて。NATOは16日、大使級会合を開いて対応を協議したが、加盟国の安全が脅かされた際に開く北大西洋条約第4条に基づく協議とは位置付けなかった。
ストルテンベルグ氏は会合後の記者会見で、意図的な攻撃だったことを示唆するものはないと指摘。初期段階の分析結果として「ロシアの巡航ミサイル迎撃のために発射されたウクライナの防空ミサイル」が原因だったと表明した。その上で「ウクライナではなく、違法な戦争を続けるロシアに最終的責任がある」と批判した。
ロイター通信によると、ポーランドのドゥダ大統領も、同国への攻撃だったことを示す証拠はなく、「不幸な事故」だったもようだと語った。当初から関与を否定していたロシア国防省は、着弾したのはウクライナ軍保有のロシア製地対空ミサイル「S300」だったとし、ドゥダ氏も同様の見解を明らかにした。
ロシア軍は15日、首都キーウ(キエフ)や西部リビウを含むウクライナ全土をミサイルで攻撃。発射されたミサイルは90発以上で、うち70発以上をウクライナ軍が迎撃した。ポーランドに着弾したのは、この際の迎撃ミサイルだったとみられる。
先進7カ国(G7)とNATO加盟国の首脳らは16日、20カ国・地域首脳会議(Gサミット)が開かれていたインドネシア・バリ島で緊急会合を開催。共同声明を発表し、ロシアのミサイル攻撃を「野蛮だ」と非難した。
バイデン米大統領は会合後、ウクライナへのミサイル攻撃は「完全に道から外れ、事態を悪化させている」と非難した。岸田文雄首相も「米国をはじめ各国と情報交換をしている。調査を注視していく」と語った。