【ワルシャワ、ヌサドゥア(インドネシア・バリ島)時事】ポーランド外務省は16日、ウクライナ国境に近いポーランド東部プシェボドフで15日午後3時40分(日本時間同11時40分)、ロシア製ミサイルが着弾し、市民2人が死亡したと発表した。2月のロシアによるウクライナ侵攻開始以降、北大西洋条約機構(NATO)加盟国内にミサイルが着弾し、犠牲者が出たのは初めて。
ロシアは関与を否定。インドネシア訪問中のバイデン米大統領も日午前、記者団に「ミサイルの軌道から考えると、ロシアからは発射されていない可能性がある」と語った。 ポーランド政府はロシア大使を呼び、詳細な説明を要求した。ロシア国防省は声明で「ウクライナとポーランド国境近くの標的を攻撃していない」と主張し、「事態の緊張を高める意図的な挑発だ」と非難した。
ロイター通信によれば、ポーランドのドゥダ大統領は「誰がミサイルを発射したか、決定的な証拠はない」と強調した上で、「ロシア製の可能性が高いが、調査中だ」と語った。モラウィエツキ首相は緊急の安全保障会議を招集。NATOは16日に大使級会合を開き、対応を協議する。
米国や日本など先進7カ国(G7)首脳らは16日午前、20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が開かれているインドネシア・バリ島で緊急会合を開催した。バイデン氏は会合後、ロシアがウクライナで事態を悪化させていると非難し、G7首脳らが調査の支援で合意したと明らかにした。岸田文雄首相は会合で「大変憂慮し、状況を注視している」と述べた。
ホワイトハウスによると、バイデン氏は16日、ドゥダ大統領、NATOのストルテンベルグ事務総長らと相次いで電話会談。ミサイル着弾に関する調査を全面支援するとドゥダ氏に伝え、NATO加盟国の防衛義務に対する米国の責任を確認した。これに先立ち、ストルテンベルグ氏は「事態を注視しており、加盟国間で緊密に協議している」と表明した。
ウクライナのゼレンスキー大統領はビデオ演説で「ロシアのミサイルがポーランドに着弾した」と批判。「(今回の着弾は)緊張を激化させる非常に重大な行為だ。(NATOの)行動が必要とされている」と訴えた。
ロシア軍は15日、首都キーウ(キエフ)や西部リビウなどウクライナ全土をミサイルで攻撃。ウクライナ側の説明では、90発以上のミサイルが発射され、うち70発以上の迎撃に成功した。ポーランド領内に着弾したのは、迎撃に際して落下したミサイルの破片の可能性もある。