若手漫才師日本一を決める「M―1グランプリ」の予選に自治体の職員や首長が相次ぎ出場し、話題を呼んでいる。プロでも落ちるとされる1回戦を突破し、いずれも2回戦まで進出する成果を挙げた。笑いでわがまちをPRするだけでなく、漫才で得た学びを日々の業務にも生かしている。
「佐賀出身の大隈重信が鉄道を日本で初めて導入した。ということは多くの遠距離恋愛が可能になった!つまり佐賀県のおかげで多くの日本国民が幸せになったと言っても…過言ではないんですね~」。あらゆる事象に佐賀を半ば強引に結び付けて笑いを誘うのは、同県中央児童相談所で働く斉藤考生さん(38)。後輩の小塩哲平さん(32)と「今日もさが日和」を結成し、隠れた地元の魅力をネタに。2年目の今年は「ナイスアマチュア賞」に選ばれた。
二人は普段、児童福祉士として地域の親子らに向き合っており、昨年から始めた漫才で体得した話し方の抑揚や間の取り方を仕事に活用。小塩さんは臨機応変な対応が苦手だったそうだが、「言葉一つで支援が良い方向に変わる経験もした」と自身の成長を語る。
大阪府柏原市の冨宅正浩市長(47)は地元企業出身の芸人、山本哲史さん(46)とコンビ「市長・市民」で初出場。「市長って暇なん?」とからかわれ、「アピールが弱い」と突っ込まれつつ、特産のブドウやワインを紹介した。出場後は直売所への新規来客があったという。完全プライベートで出場した冨宅氏は「何事もチャレンジが大事」と市政運営への気持ちを新たにしている。
福井県若狭町の渡辺英朗町長(42)も町在住の芸人、飯めしあがれこにおさん(32)と「こにおと若狭町長」を組み、特産の梅や景勝地の湖を軽妙にアピール。今後も健康増進策などを笑いを交えて発信することで「町民に笑顔と元気を与えたい」。
こうした動きについて、元芸人で笑いと行政の関係に詳しい兵庫県尼崎市職員の江上昇さんは「自治体職員らの自己研さんと地域貢献の一つの形だ。面白い人がいる事実、それを受け入れる組織風土や土地柄の魅力は大きい」と分析。「この結果を生かし、次に地域で何をしていくかが重要だ」と話す。