ロシアのウクライナ侵攻が続く。ロシア国防相が「ウクライナは放射性物質をまき散らす『汚い爆弾』の使用を準備している」と米英仏やトルコに伝えたそうだ。核の脅しで始めた侵略に、もしや最悪の結末が近づいているのか。
イギリスの絵本作家レイモンド・ブリックスの「風が吹くとき」(篠崎書林)をふと思い出した。30年以上前に買った本。家人が探し出し、久しぶりに開いた。イギリスの片田舎で年金生活を送るジムと妻のヒルダの数日間のごくごく短い物語。温かい絵と言葉から広がる恐ろしいほどの静けさに包まれた。
「戦争がありそうだ」。ジムが新聞記事のことをヒルダに話すが、あまり関心がない。ラジオから緊急のニュース。「戦争ノ勃発ニヨリ核シェルターニ3日間ホド―」。ジムは図書館で見つけたパンフレットを見ながら、ドアをはずして床と壁に固定、シェルターを作った。どこかで核爆弾がさく裂して爆風が吹き抜けた。室内はがれきの山になったが何日たっても一本の電話もなく、救助隊も来ない。気が付くと体中に発赤があり歯茎の出血が服を汚している。2人はシェルターに避難し、聖書の詩編を唱えながら死ぬ―。
私たちは何を知っているのだろう。考えさせられた。24日、桧山管内江差町では弾道ミサイルに備え避難訓練が行われた。北朝鮮のミサイルが青森上空を飛んだのは4日。携帯電話に空虚な指示が残る。異論を許さない国や独裁者が増える。(水)