妻と先日、自宅の近所を散歩していたら、1台の車がそばに止まり、運転手の女性が神妙な面持ちで駆け寄ってきた。高齢者の写真を印刷したチラシを手にしながら、「どこかで見掛けませんでしたか」。外に出たまま家に戻って来ないという。もし、目撃したら連絡してほしい―。そう言い残して立ち去った。
必死に探す女性はたぶん身内なのだろう。それから何日かたって、その高齢者は残念ながら命を落とした状態で発見された。認知症を患っていた。
屋外を徘徊(はいかい)し、帰れなくなる高齢者が各地で後を絶たない。大半は保護されるが、見つからないままだったり、さまよっている最中に何らかの事故に遭って死亡したりするケースも少なくない。苫小牧市では毎年10人前後が家から姿を消し、昨年度は13人が捜索対象となった。うち11人は無事だったものの、1人は死亡、もう1人は今も安否不明だ。
警察庁の集計によれば、警察に届け出があった認知症の行方不明者は昨年、1万7636人となり過去最多を更新した。高齢社会の進展が背景にあり、さらに顕在化することだろう。
認知機能が衰えても住み慣れた家で自由に過ごしてほしい。そんな思いで高齢の親や配偶者の在宅介護を続ける家族のためにも、対策強化が必要なのは言うまでも無い。まずは地域の捜索ネットワークにより多くの人を巻き込み、早期発見への目を増やすことが求められる。(下)