【ロンドン時事】リズ・トラス英首相は20日、辞任する意向を表明した。市場の混乱を招いた経済政策と、その後の対応を巡って強い批判を浴び、野党に加え与党・保守党内からも辞任を求める圧力が高まっていた。トラス氏はジョンソン前首相の辞任に伴う保守党の党首選で勝利し、9月6日に首相に就任したばかり。後任選出まで首相職にとどまる予定だが、在任期間は英史上最短になる。
トラス氏は官邸前で声明を読み上げ、「私は不安定な経済と国際情勢の下で首相となった。こうした状況を変えるための職務を担っていたが、全うすることができなくなった」と説明した。既にチャールズ国王に辞意を伝達したという。
次期首相となる党首選出を担う保守党内の組織「1922委員会」のブレイディ委員長によると、党首選は今夏に数週間かけて行われたものと異なり、プロセスが簡略化されるもようで、今月28日までに結果が判明する見込み。後任候補には先の党首選でトラス氏と決選投票を争ったスナク元財務相のほか、ウォレス国防相らの名前が挙がっている。
トラス氏は辞任表明に先立ち、官邸でブレイディ氏らと面会。会話の内容は明らかでないが、党所属議員が首相への不満を強めている現状を伝えられ、続投は困難と判断したとみられる。党首交代を公言する与党議員は20日までに17人に達し、トラス氏が地位を保つのは不可能との見方が出ていた。
トラス氏は市場を動揺させた先月の減税策をめぐり、クワーテング前財務相を更迭することで解決を図ったが、責任をなすりつけるような手法に批判が集中。議会答弁で「私は臆病者でなく戦士だ」とあくまで職務継続の姿勢を見せていた。
しかし、19日にブレイバーマン内相が首相に批判的な内容の辞表を出して去った上、同日夜の下院採決で保守党上層部が所属議員にパワハラと受け取られかねない対応をした疑惑が浮上。混乱極まる党内の状況に、議員らの間では「首相交代以外に混乱から抜け出る道はない」と怒りの声が広がっていた。