Q…家の中で素早く動き回る小さなクモを見つけました。何という虫でしょう?
A…それは網を張らずに獲物を捕まえるハエトリグモの仲間です。網を張らないハエトリグモは、優れた跳躍力と視力を使って狩りをします。ハエトリグモの持っている主眼と呼ばれる特殊な目には、獲物の動きを素早く捕捉し、微妙な距離を測りながら獲物に忍び寄ることのできる能力があります。主眼は頭部前面に付いていて、車のヘッドライトのように見えます。
日本には昆虫を飼育して鳴き声などを楽しむ習慣が昔からあり、江戸時代にはハエトリグモも「座敷鷹」と呼ばれて飼育されていました。ハエトリグモを飼育する楽しみは、ハエを捕る様子を見られることです。同好者が集まって自慢のハエトリグモを同じ容器に放し、どのクモが一番先にハエを捕まえるかを競うばくちも成立していました。そのため、狩りの上手なクモを売る商売もあったそうです。
ちなみに「座敷鷹」という呼び名は小さなハエトリグモがタカのような狩りをするところに由来します。その狩りの動きを見ていると精密機械のようです。
(文とイラスト 自然誌研究家〈ゆうふつ原野自然情報センター主宰〉村井雅之)=随時掲載