第2部(4) 高い技術力でリード カーボンニュートラル達成へ加速

創業30周年記念で北條社長(右)がプラグインハイブリッド車を岩倉市長に寄贈。今冬スタートのCN関連事業に役立てる

  国が2050年の「脱炭素社会の実現」を掲げる中、トヨタ自動車(愛知県)が昨年6月、カーボンニュートラル(CN、温室効果ガスの排出ゼロ)の35年達成を目指すと発表した。「オールトヨタ」で当初計画を前倒し、トヨタ自動車北海道も目標の上方修正を迫られた。

   これまで二酸化炭素(CO2)排出量は、06年度の約13万3000トンをピークに、20年度は約9万トンまで低減。モノのインターネットIoT技術活用の「省エネモデルライン」を導入し、21年度は省エネルギーセンター(東京)の省エネ大賞で準最高位。高い技術力で環境保全活動を進めてきたが、再生可能エネルギー導入や水素の利活用なども視野に、CN達成に向けた検討を加速させる。

       ◇

   トヨタ北は1992年の操業開始から、環境対策に力を入れてきた。当初こそトヨタ自動車の方針をベースにしたが、99年に国際規格「ISO14001」認証を取得し、トヨタ北独自の環境方針を制定。従業員らはごみの分別や空き缶の再利用、食堂の生ごみ処理など、身近でできる取り組みから徹底した。会社としても天然ガスやガスエンジンコージェネレーション導入、生産工程で使う熱源のスチームレス化、浄水場での排水バイオ処理、汚泥のセメント原料化など、最先端の事業を次々と進めた。

   象徴的な取り組みの一つが、2001年3月に達成した埋め立て廃棄物をゼロにする「ゼロエミッション」。研磨かすを建築用の鉄筋棒材にしたり、廃ビニールを固形燃料にしたりと、環境保全で成果を上げながら経費も削減。「環境に取り組まない企業は生き残れない」と市内製造業8社に声を掛け、「ゼロエミッション・ネットワーク」の設立にもこぎ着けた。

   苫小牧エリアの循環型社会構築を目指し、いすゞやダイナックスなど同業にとどまらず、出光興産や日本軽金属、日本製紙などの賛同を得た。当時としては珍しい環境を切り口にした企業間連携。情報やノウハウを惜しげもなく共有し、一企業では困難な事業に挑戦する風土を育んだ。

       ◇

   市内では現在、CN実現に向けた動きが本格化している。CO2を分離、回収、貯留、有効利用するCCUS拠点化実証など国の事業が展開され、昨年8月に市は「ゼロカーボンシティ」宣言。約90の企業や団体などで構成する、苫小牧CCUS・ゼロカーボン推進協議会(会長・岩倉博文市長)で産業間連携を深める中、トヨタ北もその一員として尽力する。

   市役所では今冬にも電気自動車(EV)を充電するソーラーカーポートを新設し、当面はプラグインハイブリッド車で試行する。トヨタ北が9月の創業30周年記念式典で市に寄贈した車両だ。同協議会事務局を担う市港湾・企業振興課の力山義雄課長は「トヨタ北が地域に与えた影響は大きく、多彩な分野で発展に貢献いただいた。CNでもしっかり連携し、産業振興につなげていければ」と変わらぬ期待と信頼を寄せる。

過去30日間の紙面が閲覧可能です。