「自動車関連産業は北海道のものづくりの要。御社はけん引役として本道経済の発展にご尽力頂いた」―。トヨタ自動車北海道が9月5日に行った創業30周年記念式典で、来賓の鈴木直道知事が感謝した。新型コロナウイルス感染対策で参加者を約50人に限定したが、道や苫小牧市の行政、経済界、関連企業のトップらが一堂に会した。同社が道内ものづくり企業の最大手に成長し、本道経済の活性化に貢献していることを改めて印象付けた。
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同社がトヨタ自動車の「北の拠点」として操業を始めた1992年10月以降、市内では自動車関連産業の集積が加速した。市によると、これまで24社が進出し、多くはトヨタ北が主要取引先。各企業は物流コストの低減はもちろん、リスク分散や人員の確保につなげようと、臨海部や苫東地域に立地を決めた。何百点もの部品で構成する自動変速機(AT)、無段変速機(CVT)などの製造は裾野が広い。
例えば、2006年設立のアイシン北海道(柏原)は、CVTをカバーする「リヤケース」などアルミ鋳造製品を生産し、現在は年間売上高100億円超、従業員500人規模を誇る。トヨタ北の敷地内で14年から操業するシーヴイテック北海道(勇払)は、CVTに組み付ける金属ベルト生産を一手に担う。高度な技術を有する一流の自動車部品メーカーが林立し、経済や雇用などあらゆる面で効果を生んでいる。
市内ではもともと広大な苫東地域を抱え、官民挙げて企業誘致が盛ん。自動車関連は、トヨタ北の操業前から柏原でいすゞエンジン製造北海道(当時はいすゞ自動車北海道工場)、ダイナックス苫小牧工場(本社千歳市)の「生産拠点」がある中、「トヨタグループ」の業績拡大で、主要産業としての地位を不動のものにした。
市がまとめる工業統計でも、産業構造の変化が顕著に表れる。トヨタ北操業前の1990年、主に自動車部品を示す「輸送用機械」の製品出荷額は338億円で、市内出荷総額(約5700億円)の6%程度にすぎなかった。出光興産北海道製油所の「石油」、王子製紙や日本製紙など「紙・パ」の各2000億円弱と大きな差があった。
トヨタ北が新型ATの生産を飛躍的に伸ばし、年間売上高が1000億円を超えた2000年、輸送用機械は2424億円でトップの座を奪い、出荷総額(約7700億円)の約31%を占めた。近年は石油が群を抜いてトップだが、輸送用機械は2000億円台後半、出荷総額の20%台で「2位」を堅持する。
トヨタ北の製品は現在、国内はトヨタ自動車(愛知)など8カ所、海外はアメリカ、中国、ブラジルなど22カ所の工場に出荷され、搭載されたトヨタ車は各地で「快走」する。北條康夫社長は式典で力を込めた。「従業員も、売上高も、道内では最大規模まで成長できた。積み上げてきた30年を大切な糧として、激動の時代、決してひるむことなく進みたい」
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9月に創業30周年を迎えた苫小牧市勇払の自動車部品製造業、トヨタ自動車北海道。道内ものづくり企業の最大手に成長する過程で、まちに変化や波及効果をもたらした。企画「第2部」はそんな影響や今後の展望を取り上げる。