むかわ町穂別和泉で30年以上にわたり、農業を営みながら森林組合役員として林業振興に携わった。持ち前のリーダーシップで現在、町内の老人クラブのみならず、胆振管内全体の連合会長として手腕を振るう。来年は80歳。「会員の平均年齢は80代。自分はまだ若手ですよ」。冗談交じりに語る表情はバイタリティーにあふれている。
白老町の製紙工場に勤めた後、20代後半で家業を継ぎ、米作や畑作、和牛生産など幅広く手掛けた。その傍ら、1995年、旧穂別町森林組合の代表理事組合長となり、組織強化のために近隣組合との合併に尽力。旧穂別町と苫小牧市の森林組合が合併し、2004年に誕生した穂別苫小牧森林組合で3年間にわたり組合長を務めた。07年には、東胆振を範囲に発足した苫小牧広域森林組合の初代組合長に就き、同じく3年間、道内有数規模の森林組合をけん引した。
厳しい経営環境にあった林業の活性化、発展に貢献した功績は高く評価され、12年に北海道産業貢献賞、翌年には旭日双光章(林業振興功労)に輝いた。
農業を後継者の長男に託し、一線を退いた後も地域のために―と体を動かし続けた。14年、地元有志で老人クラブ「豊和友愛クラブ」(現友愛クラブ)を立ち上げ、運営に当たった。同クラブは町の委託業務で旧和泉小学校の施設を管理しながら、事務所に使っている旧職員室を拠点に活動。地域の環境美化事業などに励む。
「年間事業は春先の総会で決めるが、途中で新しいことをやりたいという案が出れば、承認を得て年度計画に組み込むときもある」。活動が硬直化しないよう「臨機応変」をクラブのモットーとしている。
会員は子どもの頃から農作業などで働き続けてきた人たち。「仕事から解放され、できなかった旅行を楽しみにしている人が多い」と言い、「新型コロナウイルスの感染流行前は会員旅行を楽しんでもらった。コロナが落ち着けば、また企画したい」と考えている。
事業は会費だけで賄えないものもある。このため、廃品回収で資金を集めて補う。「会員も率先して参加してくれるんです」と笑顔を見せる。
会員一人ひとりへの寄り添いを大事にする。高齢だからパークゴルフのホールを歩き回るのが大変―という声を聞けば、体に負担なくプレーできる方法で開催。「初めてクラブを手にした人も喜んでくれた」と言う。2年前からは町老人クラブ連合会主催の大会として催し、今年は町内9クラブから42人が参加した。
新型コロナ流行による行動制限の反動からか、最近は「みんなで集まって何かしたいという人が多くなってきた」と感じる。「コロナ禍の中でも会員が楽しめるようなことができれば」と模索する日々だ。
(石川鉄也)
藤岡孫一(ふじおか・まごいち)1943(昭和18)年7月、旧穂別村生まれ。大昭和製紙白老工場(現日本製紙)に勤めた後、実家の農業を継いだ。2014年からむかわ町老人クラブ連合会の会長として活躍。むかわ町穂別和泉在住。