新型コロナウイルスのワクチン接種を装ったなどとして医師が逮捕された事件で、ほかにも接種を偽装していた疑いがあるとして、警視庁捜査2課は3日、詐欺と公電磁的記録不正作出・同供用容疑で、東京都北区の「王子北口内科クリニック」院長船木威徳容疑者(51)を再逮捕した。「今話すことはない」と容疑について黙秘している。
再逮捕容疑は昨年9~12月、愛知県稲沢市の40代女性ら家族3人にワクチンを接種したとする予診票を偽造し、国のワクチン接種記録システム(VRS)に虚偽の接種記録を登録させるなどし、業務委託料計約1万4000円を詐取した疑い。
同課によると、船木容疑者と女性は数年前に投資セミナーで知り合い、女性から接種偽装を依頼した。2人はワクチンに否定的な考えを持っていたとみられ、セミナーの仲間内でワクチンを「殺人ワクチン」、接種済み証を「なんちゃって証明」と呼んでいたという。
船木容疑者は今年9月、札幌市の女性ら3人にもワクチンを接種したと装い、業務委託料をだまし取ったなどとして詐欺容疑で逮捕、起訴された。
ワクチンは住民票を置く自治体で受けるのが原則だが、昨年7月以降、同院で接種記録がある約230人の大半が区外の人だった。船木容疑者はこれまでの調べに「さまざまな人に頼まれ、ワクチンを打ったことにして接種済み証を作った」と供述していた。
捜査関係者によると、「接種希望者に生理食塩水を打ったこともある」とも話しており、ワクチンと偽って患者に無断で生理食塩水を注射した疑惑もある。これまでに健康被害は確認されていないが、同課は供述の裏付けを慎重に進める。