新型コロナウイルス感染者の「全数把握」が全国一律に簡略化された26日、道は陽性者健康サポートセンターの運用を始めた。医療機関から保健所への発生届の対象が絞り込まれ、若年層の感染が多い苫小牧市内の状況に当てはめると、7割近くが対象外となる見込み。関係機関の負担軽減、医療サービス重点化が期待される一方、患者へのより丁寧な説明などが求められる。
政府が26日に始めた「全数把握」の簡略化は、オミクロン株の特性を踏まえ、発生届の対象を(1)65歳以上(2)入院を要する人(3)重症化リスクがあり、治療薬か酸素投与が必要な人(4)妊婦―の4類型に限定しつつ、感染者の総数は届け出の対象外も含めて集計する内容。発生届は医療機関の判断で保健所に提出するが、重症化リスクのない若年層など、多くの感染者は届け出の対象外となる。
道は全数把握の見直しに先駆けて、13日から陽性者登録センターを全道に拡大。発熱などの症状がある人に検査キットを送り、自己検査した人の陽性を判定・登録する仕組みを構築した。26日には国の考え方に沿う健康フォローアップセンター機能も併せ、陽性者健康サポートセンターの運用を開始。全道各地(保健所設置市を除く)で届け出対象外となった「自主療養者」から、24時間体制で電話=(0120)303111=相談に応じ、体調悪化の際には必要な医療につなげる。
苫小牧保健所は「前週の感染状況であれば、苫小牧市内では約7割が対象外になる。発生届の提出が少なくなれば、その分だけ事務手続きも少なくなる」と説明する。医療機関が住所、氏名、症状など詳細な個人情報を、国が運営する専用サイトに入力し、その届け出を保健所が一人一人確認し、感染者に連絡(当初は電話、3月からショートメッセージサービス)してきたが、今後は届け出対象外は年代別人数の確認で済むため、保健所からの連絡も原則なくなる。保健所ではホームページで26日から、これら対応の大幅な変更を周知。届け出対象外で症状が軽い人は、自ら健康管理して自宅療養する基本の対応などを紹介している。
一方、同保健所管内(東胆振1市4町)のコロナ検査体制は、当初は苫小牧市医師会(沖一郎会長)が開設する苫小牧発熱検査センターがほぼ一手に担い、ウィズ・コロナ施策の進展により、受診・検査できる医療機関が現在25カ所(道公表分)に広がった経緯がある。全数把握の見直しによる負担の軽減は、各機関で把握する陽性者数に比例するため、沖会長は「負担軽減につながるところもある」と前置きしつつ、自身が運営する医院の発熱外来や検査の状況も踏まえ「入力時間は減ると思うが、影響を感じないところもあると思う」と受け止める。
発生届けを出すかどうかは医師が判断したり、患者にはより丁寧な説明が必要になったりと、異なる負担増も想定される。ワクチン接種に象徴されるように、国の方針により目まぐるしく変わるコロナ対応に、肝心の現場が追われ続けて疲弊している現状もある。沖会長は「感染症分類の在り方など本質的な議論をしっかりし、医療を必要とする人に適切に提供していくことが大事」と強調している。