自動車整備士の国家資格を持ち、長年にわたり道内4カ所の道立高等技術専門学院(技専)で自動車業界の将来を担う若者の育成に尽くした。今は苫小牧市内の幼稚園で活躍している。2輪の乗り物をこよなく愛し、「自転車やバイクと共に過ごしてきた人生。楽しみながら前に進むという精神は、あらゆることに通じると思う」と語る。
日本が高度経済成長期に入った1954年、農林業が盛んな網走管内留辺蘂町(現北見市)で生まれた。実家は農家で11人きょうだいの末っ子。年齢の離れた兄や姉は一緒に遊んでくれたり、働いた給料で自転車を買ってくれたりと、「親のような存在だった」と振り返る。
自転車の魅力にはまった中学生の時、長距離走行に挑戦した。上川管内上川町と北見市の境にある石北峠で懸命にペダルをこいでいた際、出会った大学生からコーヒーの差し入れをもらったことも。「スピードの速い自動車と違い、ゆっくりと動いているからこその出会いがいろいろとあった」と懐かしむ。
マイカー普及による自動車業界の発展を見込み、地元の高校を卒業した73年、札幌市にあった北海道自動車短期大学へ進学した。新聞配達のアルバイトも得意の自転車で始めた。配達区域は歓楽街のススキノ。飲食店ビルやアパートが多く、階段を数段飛ばしながら走って新聞を届けていたため、「足腰が丈夫になったし、根性も付いた」と笑う。今も時折、自宅から約5キロ離れた現在の職場まで自転車で通っている。
短大を卒業した後、75年から札幌トヨペット苫小牧支店で整備士として9年間働いた。身に付けた技術を活用し、後進の育成に携わりたいと思い立ち、退社。84年、技専の自動車整備科指導員に採用された。
技術習得に向き合う熱意は人まちまちで「教える苦労もあった」と言う。だが、教え子たちが現在も車の整備工場で活躍している様子を目にしたり、まちで元気な姿を見掛けたりすると、うれしさがこみ上げる。
技専では、ガーナ、フィリピンから自動車整備の実習生を受け入れることもあった。「言葉は通じなくても、技を見せることでコミュニケーションを取ることができた」と当時を思い返し、実習生たちが母国の自動車業界で頑張る光景を想像する。
技専を退職後、2019年から認定こども園苫小牧ふたば幼稚園(王子町)で園長を務めている。資格を有効活用し、送迎バスの整備管理者を務めているほか、所有する大型2種免許を生かし、時には自らバスのハンドルを握って園児の送り迎えに当たる。「子どもたちの元気な姿が日々の活動の燃料。園の歯車としての役割をこれからも果たしたい」と言い、第二の人生も全力で進む毎日だ。
(高野玲央奈)
亀井 和夫(かめい・かずお) 1954(昭和29)年11月、網走管内留辺蘂町(現北見市)生まれ。2人の子供と3人の孫に恵まれた。趣味は自転車やオートバイの運転のほか、ウトナイ湖周辺などで自然散策も楽しんでいる。苫小牧市明野新町在住。