Q…アリの巣の中で成長するチョウがいることを子どもが教えてくれました。観察させてあげたいのですが、できますか?
A…そのチョウはゴマシジミです。
ゴマシジミはシジミチョウ科に属する開長(羽を開いた大きさ)40ミリほどの小さなチョウで、名前は羽の裏にごまのような模様があることに由来します。
ゴマシジミの成虫は7月中旬ごろから見られ、幼虫の食草であるナガボノシロワレモコウの花が咲き始める8月になると観察しやすくなります。
ナガボノシロワレモコウの近くで静かに観察していると、懸命に雌を探して飛び回る雄や産卵に訪れる雌を見ることができます。根気よく観察していれば、つぼみに産卵する雌の様子も見られるでしょう。
お子さんのいう通り、ゴマシジミはアリの巣の中で幼虫時代を送るという不思議な生態を持つチョウです。ナガボノシロワレモコウの上でふ化した幼虫はしばらくの間、花やつぼみを食べて成長し、3回目の脱皮を終える頃、クシケアリの仲間によって巣の中に運び込まれます。
巣の中に運ばれた幼虫は背中から甘い汁を出してアリをだましながら、アリの幼虫やサナギを食べて成長し、翌年の7月に羽化します。羽化はアリの巣の出入り口近くで行われますが、羽化の瞬間、正体がばれると襲われるため、逃げるように速やかに行われるそうです。
(文とイラスト 自然誌研究家〈ゆうふつ原野自然情報センター主宰〉村井雅之)
=随時掲載