東京五輪・パラリンピックの汚職事件で、東京地検特捜部が、大会組織委員会元会長の森喜朗元首相から参考人として事情聴取していたことが9日、関係者への取材で分かった。組織委元理事、高橋治之容疑者(78)=受託収賄容疑で再逮捕=がスポンサー選定過程で、紳士服大手AOKIホールディングス側に森氏を紹介し便宜を図った疑いがあり、特捜部は裏付けを取る必要があると判断したもようだ。
特捜部は森氏に対し、高橋容疑者から紹介を受けた経緯や面会でのやりとり、会長の職務権限などについて確認を求めたとみられる。
関係者によると、高橋容疑者はスポンサー選定過程の2017年夏ごろ、AOKI前会長、青木拡憲被告(83)=贈賄罪で起訴=の求めに応じて会食の席を設け、森氏を紹介。その後も3者で複数回、面会していた。
組織委の役職員は「みなし公務員」に当たり、会長職は定款で「法人を代表し、業務を執行する」と規定されている。高橋容疑者は、業務全般に権限を持つ森氏を紹介し、青木被告に便宜を図った疑いがあるという。
森氏は招致活動から大会に関わり、組織委が発足した14年1月から会長を務めた。理事の定員は当時35人で、電通専務などを歴任し、スポーツビジネスを手掛ける高橋容疑者は、35人目の理事として同年6月に就任した。
高橋容疑者は他の理事の後押しを受けて就いたといい、特捜部はこうした経緯に関しても森氏に説明を求めたとみられる。
森氏は21年2月、女性蔑視発言で引責辞任した。
高橋容疑者は、青木被告らからスポンサーや公式ライセンス商品販売契約などについて便宜供与を依頼され、計5100万円の賄賂を受け取ったとして6日起訴された。
出版大手KADOKAWA元専務芳原世幸容疑者(64)=贈賄容疑で逮捕=らからも同様の便宜を頼まれ、計約7600万円を受領した疑いで再逮捕されている。