【下】 持続可能なまちなか再生を 悩みに寄り添うゲートキーパー育成 むかわ町 竹中喜之町長

  • 特集, 胆振東部地震から4年 町長インタビュー
  • 2022年9月9日
竹中喜之むかわ町長

  ―復興事業の進捗(しんちょく)状況は。

   地方創生の総合戦略やまちづくり計画に内包した施策、事業を具体的に推進しており、その点検・検証に努めている。大体の事業には向き合っているが、まだ道半ば。被災した鵡川、穂別の両地区ともに公共や商業の中心地の位置付けにあり、町民にとっても生活の場として重要なエリア。次代につなぐためにも震災復興、持続可能なまちなかへの再生は不可欠だ。震災前と全く同じような再整備は難しいが、商業だけでなく子育て支援や福祉の推進、コミュニティーの醸成なども考える。既存のものを生かしながら、鵡川地区では観光協会と連携し空き店舗利用のチャレンジショップを実践。穂別地区では買い物弱者対策などで組織の設立を目指している。

   ―震災後も新型コロナ感染症、自然災害が続いているが。

   町民にはハイリスクの方がまだいる。新型コロナの影響でうつ状態に置かれている状況も見られる。メンタル面を含めてケアに努めていきたい。震災以降、メンタルに関するアンケート調査や支援の活動に取り組んでいるが、今年は悩む人に寄り添い、サポートするゲートキーパーの町民向け養成講座も開催したい。また、災害により強いまちづくりを意識し、切迫した海溝型地震による津波リスクの対象自治体として、さらに近年の気候変動も踏まえて、町民の命や地域経済活動を守る施策を講じていきたい。

   ―「事前復興計画」の策定について。

   道内では前例がなく、全国的にも少ない。知見を持つ機関の力を借りて進めるが、今年度は計画策定に向けた準備の年となる。国の事業メニューの活用にも手を挙げている。事前復興について学びながら、鵡川地区は海溝型地震による津波、穂別地区は土砂災害などと、被害発生の危険がある地域の把握、課題の集約を進める。自然災害の発生リスクは高まっており、スピード感と住民の合意形成を重視し、遅くても来年度には策定作業に着手したい。

   ―防災を含め、まちづくりをどう進めるか。

   防災関連の連携協定をこれまでに50団体と締結した。これが地域の課題解決につながり、防災訓練にも一緒に参加してもらうことで、いざという時のつながりも生まれると思う。また、役場だけでは情報や知見に限界があり、地域おこし活性化起業人、地域力創造アドバイザーといった外部人材の招聘(しょうへい)にも取り組み、まちを活性化させたい。

   昨年度、自治体合併後に初めて転入が転出を上回る社会増が見られた。比較的若い世代の転入超過というこれまでにない傾向。この動きを検証し、子育て環境の充実につなげたい。農林漁業のまちであるむかわ町は、災害のたびに打撃を受けながらも立ち上がってきた。1次産業の強靭(きょうじん)化、振興のためにも災害に強いという視点でまちづくりを進めたい。

   ※胆振東部支局・石川鉄也が担当しました。

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