安倍晋三元首相の国葬に関する閉会中審査が8日、衆参両院の議院運営委員会で開かれた。国民の賛否が割れている中で国葬実施を決定した理由について、岸田文雄首相は安倍氏の首相在任期間が憲政史上最長だったことなどを挙げ、判断は適切だったと強調。実施への批判が出ていることに関しては「謙虚に受け止め、国民への説明責任を果たしていく」と述べた。
首相が国会で国葬に関して説明するのは初めて。質疑では自民、公明両党と日本維新の会が実施に賛成、立憲民主、共産両党が反対の立場を示した。国民民主党は明確にしなかった。
首相は冒頭、「国として安倍氏を追悼するとともに、わが国は暴力に屈せず民主主義を断固として守り抜くという決意を示す」と訴えた。
首相はさらに実施の理由として、260超の国・地域・機関から弔意が寄せられていると説明。「海外からの多くの敬意や弔意に礼節を持って応えることが必要だ」と述べた。弔意は1700を超えているとし「多くが日本国民全体への弔意を示す内容となっている」と明かし、理解を求めた。国葬には米国のハリス副大統領らが参列する予定だという。
質疑では実施の根拠が論点になった。首相は内閣府設置法を法的根拠に「行政権の範囲で、内閣法制局の判断を仰ぎながら決定した」と答弁。警備費などを含む経費の概算が16億6000万円程度となることに関しては「妥当な水準だ」との考えを示した。「国葬をしても国民の内心の自由が侵害されることはない」とも語った。
立民の泉健太代表は、首相経験者の国葬を行う基準づくりを求めた。首相は「そのときどきの政府が総合的に判断するのがあるべき姿だ」と述べるにとどめた。新たな法整備も否定した。
野党側は安倍氏と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)とのつながりも問題視。泉氏が「自民党との関係では安倍氏がキーパーソンだったのではないか」とただしたのに対し、首相は「お亡くなりになっている今、確認するには限界がある」と語った。
共産党の塩川鉄也氏から、旧統一教会との関係が政策決定に影響した可能性を指摘されると、「一部特定の団体によって全体がゆがめられるということはない」と否定した。立民が検討しているカルト被害防止救済法案については慎重な姿勢を示した。