2018年9月6日の胆振東部地震発生から4年。甚大な被害に遭った厚真、安平、むかわ各町の町長に復旧の現状や課題などを聞いた。
―地震から4年たち、今の受け止めは。
インフラの復旧は加速しており、道と町の復旧事業の進捗(しんちょく)率も84・5%。あっという間だったが、被災した町民が心の傷を癒やすまでにはまだ時間がかかる。
―人口動態で3年ぶりの社会増(転入増)となった。
震災後の19、20年度は高齢の方々が町を離れて子どもの家に身を寄せたり、社会福祉施設が受け入れを止めたりしたこともあって、人口を増やす条件を整えられなかった。今は震災の影響も落ち着き、町の魅力に興味を持って新しい分野に挑戦する方が増えている。住宅分譲地も好評で買い求める方も多くなっている。
―コミュニティー再生の現状は。
震災で特に北部山間地は、集落ごとなくなったり、世帯数が半減したりした地域もある。従来と同じようなコミュニティーを再生するのは非常に難しい面もあるので、新たな枠組みづくりを含め検討、サポートしていきたい。生活空間としての再編は避けて通れないが、住民の意思や決断が最優先になる。
―被災者の心のケアにどう対応するか。
生活面から精神面まで個々のケアを具体的に行うため、町や社会福祉協議会、認知症心理士会らによるチームを編成し、支援していく。被災者にアプローチする上で新型コロナ感染対策が課題となるが、乗り越える手段を講じていきたい。
―震災の記憶の継承をどうするか。
被災の記憶の風化を懸念しており、しっかりと後世に伝え残さなければならない。われわれの経験を全国、全世界にも伝え、防災に生かしてもらいたい。被災地の現状を学びたいと厚真に訪れる人も多くいる。被災体験や被災後の対応を総括した記録誌やドキュメンタリー制作、3町全体の取り組みなどを記録に残すことも既に進めている。
厚真は大規模な被災森林を抱えており、全国の方々が植林活動を手伝い、森林復興に関わってもらうことも大切だ。土砂災害による被災林の回復にはどういった取り組みが必要で、どんな苦労が生じるのか学んでもらいたい。被災森林に関しては、実際に起きた災害を知り、復旧過程に関わる体験を伴う震災遺構としていければと思う。
―今後、国や道に求めることは。
これまでの要望で被災森林については林野庁や道と協議し、復旧に関する新たな枠組みの拡大や充実を図ることができたが、引き続き支援を求めたい。また、農業分野へのデジタル技術活用など、地域の産業振興に向けた支援をお願いしていきたい。