【ロンドン時事】英与党保守党は5日、ジョンソン首相の後継を決める党首選決選投票の結果を発表し、エリザベス・トラス外相(47)がリシ・スナク前財務相(42)を破って勝利した。故サッチャー元首相、メイ前首相に続く史上3人目の女性首相が誕生することになる。
結果が発表されたロンドンの会場で、トラス氏は勝利演説し、最重要課題の経済問題に優先的に取り組み「減税を実行し、経済成長を促す」と強調した。深刻化するエネルギー危機や、新型コロナウイルス禍の影響で立て直しを迫られる医療改革に対処し「結果を出す」と約束。2年後に迫る総選挙を見据え、指導者として「保守党に大きな勝利をもたらす」と宣言した。
ジョンソン氏は6日に辞任し、エリザベス女王の前でトラス氏が新首相として正式に就任する。首相の任命は通常、ロンドンのバッキンガム宮殿で行われるが、今回は女王の静養先スコットランドのバルモラル城で実施される。女王は今年、在位70年を迎え96歳になった。女王の健康問題を考慮した措置で、バッキンガム宮殿を離れての首相任命はエリザベス女王即位後初めて。
党首選は、コロナ規制違反の官邸パーティー問題などで批判を浴びたジョンソン氏が、スナク氏ら有力閣僚の離反を受けて窮地に陥り、7月に辞意を表明したことを受けて実施された。下院議員による予備投票を勝ち残ったトラス氏とスナク氏の間で、党員による郵便やオンラインでの決選投票が行われた。
1カ月以上にわたった投票では約17万人とみられる党員が有権者となった。党員の人気を集めるトラス氏が当初から優勢で、最終結果は、トラス氏が約57%を得票、スナク氏は約43%だった。
党内で根強い人気を誇るジョンソン氏の辞任の引き金を引いたとして、スナク氏への反発が広がったこともトラス氏を後押しした。ただ、両候補の票差は事前の予想より小さく、トラス陣営が期待した「地滑り的勝利」は成らなかった。投票率は約83%。
英国は、ロシアのウクライナ侵攻などを受けたエネルギー価格高騰や約年ぶりの物価高に見舞われている。光熱費の記録的値上がりを前に、政権与党に対する国民の不満は強い。ジョンソン氏をめぐる一連の不祥事も影響し、保守党が支持率で最大野党の労働党に大差のリードを許す「逆風」の中での新首相誕生となる。