<3> サロン再開に歓声 コミセン新設 町民の心のよりどころ

  • 特集, 胆振東部地震から4年
  • 2022年9月2日
サロンの中で輪投げゲームを楽しむ参加者=8月24日、厚真町富里地区

  【笑顔が広がる】

   厚真町富里地区に昨年末整備された「厚北地域防災コミュニティセンターならやま」に8月24日、歓声や拍手が響いた。

   「それ!」「よし、入った」「すごい」―。

   町社会福祉協議会による「いきいきふれあいサロン」が開かれ、富里、高丘、東和地区の高齢者20人ほどが輪投げゲームで笑顔を満開にしていた。富里地区の自宅が4年前の胆振東部地震で損壊し、現在は本郷地区の災害公営住宅で暮らす山口清光さん(85)は「コロナ禍なので人数は少ないが、みんな楽しみにして集まってくる」と笑顔を見せた。

   【再開に踏み切る】

   地域で開かれるサロンは、町民が住み慣れた場所で生き生きと過ごすための「憩いの場」。胆振東部地震後は、特にその役割が大きくなった。しかし、コロナ禍で行動制限が求められ、各町とも再開と中止を繰り返している。

   その中で厚真町は「マスクの着用が定着し、ワクチン接種も進んでいる」(町社協)と感染状況を見極めながら、今春再開。食事提供を控えるなど従来通りではないが、関係者が工夫を凝らして参加者を楽しませている。事業を担当する町社協管理職の山野下誠さん(51)は「コロナへの意識は人それぞれなので強制はできないが、外に出ないことになじんでしまうのが怖い。サロンは町民に声掛けをできるチャンスでもある」と再開に踏み切った理由を話す。

   【人に優しい新拠点】

   ならやまに集まってくるのは、震災被害の大きかった富里、高丘など北部地域の町民。サロンは震災前まで富里地区にあった自立支援センターで開かれていたが、地震で全壊した。このため、その後は東和地区の生活会館などを利用したが、町が富里に新たな施設を整備。コミュニティー機能を持たせた地域住民の交流スペースを確保したほか、洋室、和室を2部屋ずつと休憩室を設けた。利用者からは「スペースも確保されているし、風通しもいい」と好評だ。多目的トイレやスロープも備え、高齢者や障害者にも優しい造りとなっている。

   【避難所としても機能】

   施設には防災備蓄庫、シャワールーム、ソーラー発電も配備し、災害時には一時避難施設として活用できる。8月中旬に相次いだ降雨時には、実際に避難所を開設。16日に「避難指示」が発令された際は高丘地区の7世帯12人が避難し、一夜を過ごした。

   高丘自治会の松平功会長(81)は「(災害は)忘れたころにやって来る。近くに避難所ができてよかった」と安堵の表情を見せ、本郷地区の山口さんも「河川の被害や(山腹崩壊による)土砂災害もここまでは届きにくい。以前の施設より災害に強い場所で、安心できる」と話す。

   平時はコミュニティーを醸成し、災害時は万全な備えで町民の心身を守っていく。安心して集まることのできる施設は、町民の心のよりどころになりつつある。

  (随時掲載します)

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