<2> 大きな被害 人口減に拍車 「教育のまち」で移住促進

  • 特集, 胆振東部地震から4年
  • 2022年8月31日
子育て世代をターゲットにした現地移住体験ツアー。保護者が説明を受ける間、子どもたちは地域住民が面倒を見る=8月20日、安平町追分地区

  【教育のまちをPR】

   地方の最重要課題にも位置付けられる人口減少。厚真、安平、むかわの3町も例外ではなかったところへ、2018年9月の胆振東部地震で各町とも大きな被害を受け、さらに人口減に拍車が掛かった。震災からこれまでに減った人の数は3町合わせて1500人を超え、対策が急がれている。

   そんな中、安平町は「日本一の教育のまち」とアピールし、さまざまな政策を掲げて子育て世代の関心を集めることに乗り出した。注目を浴びる小中一貫の義務教育学校「早来学園」の来春開校をチャンスととらえ、地域のこども園の充実や、町独自の社会教育事業「あびら教育プラン」の推進に取り組んでいる。

   【保護者の好感を得る】

   この状況を発信するため、町外の人に安平町の暮らしや子育て・教育を直接見てもらう「移住体験ツアー」を2021年度にスタートさせた。初年度実績では7組が現地ツアーに参加し、3組がすでに移住(予定を含む)。8月下旬に追分地区で行ったツアーには、札幌市と和歌山県から2組が来町しており、こども園などの見学を実施したほか、資金や暮らしに関する相談会、あびら教育プランの説明会を開催した。

   保護者が説明を受けている間、小さな子どもたちはユニークな遊具などがある園内で伸び伸びと遊んだ。地域住民が世話をする場面もあり、安心して子育てができる環境を目の当たりにした。札幌から参加した30代夫婦は「(こども園にあるのは)子どもの好奇心や探究心をくすぐるものばかり」「子どもに(安平町の教育を)経験させてあげたい」と話し、町独自の教育やまちぐるみの手厚い子育て支援に期待感を膨らませているようだった。

   【課題は仕事の確保】

   町に関心を持った人々が移住に踏み出すには、そのための資金繰り、住む家、生活環境などが課題になり、中でも働き口の確保は重要になる。仮に移住した場合、現在の勤務先は「町外」になり、通勤時間が今より長くなる。勤務先の所在地によっては退職せざるを得なくなることも想定される。

   働き盛りの世代が、希望する条件通りに再就職できる確証はなく、共働きの家庭からは「2人とも仕事を探すとなると大変」との声が聞こえてくる。町の担当者は「実際に仕事に関する問い合わせは寄せられている」と話し、関心の高さを感じている。

   【支援の充実を目指す】

   こうした実態を捉え、町は今年6月、地元企業、団体、NPO法人などと連携し「あびら移住暮らし推進協議会」を設立した。移住に関心を持つ人々の希望にできる限り応じられるよう、支援体制の充実を図る組織だ。

   早来学園や町独自の教育に興味を持つ人は確実に増えており、このチャンスを逃すまいと移住希望者たちの悩み解消に向けて関係者の模索と取り組みは続く。

  (随時掲載します)

過去30日間の紙面が閲覧可能です。