【高い防災意識】
この夏、厚真町では、2018年に胆振東部地震が発生してから初めてとなる大規模な防災訓練が行われた。震度6強の地震が発生し、大津波警報が発令された―との想定で進められ、小さな子どもを連れて参加するなど、当初の予定を大幅に上回る町民80人が参加。避難所となった上厚真小学校に足を運んだ。
厚和地区在住の曽根正勝さん(69)は「(上厚真小はまちで)一番高い所にあるし、避難しやすい。(避難について)知らないこともあったので、参加しておいてよかった」と話す。
被災を最小限にするために、できる限りの備えをする。4年前に地震で大きな被害を受けた町民たちの防災意識の高さがうかがえた。
【訓練で現状確認】
上厚真小の校内には避難所運営体験をしたり防災講話を聞いたりする場があり、ドローン、災害対策の資機材などが展示されていた。胆振東部地震からの復旧・復興への歩みを写真や新聞で伝えるコーナーもあった。
町民はもちろん、町職員、地域の防災マスター、消防や警察、自衛隊、町と災害協定を結ぶ関係団体、企業などを交えた大がかりな訓練となった。上厚真小4年の石掛洋君(10)も初めて段ボールベッドなどの組み立てを経験し、「次はうまくできると思う」と語った。それぞれが日々の備えの大切さを改めて実感していた。
【課題を洗い出す】
いつ来るか分からない災害に備える上で、訓練が果たす意味は大きい。
道の防災マスターでもある町内豊丘の山路秀丘さん(68)は「実際の災害時には苦情が出ると思う。それだけに避難所に来てみることは一つの訓練になる」と意義を語り、「(町民から)寄せられた意見を吸い上げて、次の訓練につなげてもらえたら」と期待する。
町はこうした声も踏まえ、防災訓練の参加者を対象にアンケートを実施しており、今後に向けて課題などをさらに洗い出していく考えだ。
【備える力を更新】
隣町の安平町は、町と災害協定を結んだ団体の協力を得て、小学生向け防災教育をこの夏行ったほか、各自治会が独自に感染症対策を講じて資機材の使い方を学ぶ訓練などを実施してきた。むかわ町は、毎年大雨や洪水、津波を想定した訓練を行う以外に、防災を中心に据えてまちづくりやいざという時の備えを固める「事前復興計画」の策定に今年度中に乗り出すことを、竹中喜之町長が施政方針で明言している。
全国各地で自然災害が相次ぐ中、3町はこの春、防災に関するハザードマップ(災害予測図)を改訂した。各町が備える力を日々更新している。
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胆振東部地震から間もなく4年。復旧から復興への局面に差し掛かろうとしている中、厚真、安平、むかわの各町に暮らす人たちはどんな思いで今を生きているのか。心の傷や苦しみを乗り越えて前を向く人々の姿を追う。
(随時掲載します)