政府は24日、新型コロナウイルス感染者の「全数把握」が医療機関や保健所の負担になっていることを踏まえ、都道府県の判断で、重症化リスクのある患者などに限定できるようにすることを決めた。水際対策も条件付きで緩和し、9月7日から出国前の検査に基づく陰性証明に代えて、ワクチン接種証明の利用を可能にする方針を打ち出した。
岸田文雄首相がオンラインで記者団に明らかにした。首相はこれに先立ち、加藤勝信厚生労働相ら関係閣僚や感染症専門家らと協議。一連の具体策を実行に移すよう指示した。
首相は感染者の届け出について、発熱外来や保健所業務が逼迫(ひっぱく)した地域を対象に、高齢者や入院を要する人、重症化リスクがあり治療薬投与が必要な人などに限定することを「緊急避難措置として自治体の判断で可能にする」と説明。ただし、届け出対象外であっても、陽性者数は原則として従来通り把握に努める。首相は「発熱外来のさらなる拡充を図る」とも語った。
全数把握の見直しについては25日に省令を改正する。感染者総数と年代別総数を毎日公表することを条件に、届け出対象を絞り込めるように変更する。
65歳未満の患者の届け出について、独自の入力項目を設けている都道府県に対しては、削減の検討を求める。
関係閣僚らとの協議では、感染拡大を抑制しつつ社会経済活動を平時に近づける「ウィズコロナ」実現へ検討を進めることを確認。首相は「療養の考え方の転換、全国ベースでの全数届け出の見直し、陽性者の隔離期間の短縮などについて、できるだけ速やかに示す」と記者団に述べた。
軽症者への対応強化策としては、月内に検査キットをOTC(一般用医薬品)化し、インターネットなどで入手が容易になるよう取り計らう考えも示した。
水際対策では、日本への帰国者を含む入国者への検査義務付けを改め、9月7日から、出国前72時間以内の検査に基づく陰性証明に代えて、3回目までのワクチン接種を条件に接種証明を利用できるようにする。
1日当たりの入国者数の上限について、政府内では現在の2万人から5万人に引き上げる案が浮上している。ただ、24日の段階では結論が出ず、首相は「今後さらに緩和する。速やかに公表する」と述べるにとどめた。