今月上旬、安平小学校に展示されていた、この学校の歴史を物語るさまざまな資料に触れた。一つが写真で、開校間もない頃や明治から昭和初期と思われるものが数多くあった。白黒の写真には木造の校舎や軍人のような姿の男性が写っていて、当時の様子が伝わってきた。おそらく、この頃に学びやで過ごし、当時を思い出せる人はほとんどいない。学校の関係者は「こういう物が大切に残っているって、すごいですよね」と驚きながらも笑顔で話してくれた。
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来年3月末での閉校にちなみ、安平小では1~9日、校内の各教室、体育館などを自由に見て回ることができる学校見学会を企画した。玄関から入ってすぐの廊下沿いには、開校から116年にわたる歴史を振り返ることができる、かつての写真集や卒業文集などをずらりと並べた。校内で開かれた水泳、スケート大会の歴代優勝者の名前を記してトロフィーにくくり付けていたペナントのリボンも、数え切れないほど残っていた。
土日曜日を除く計7日間で、学校を訪問した人は数えるほど。それでも、「父親がかつてここ(安平小)で教員をしていた」という縁があり、苫小牧市から足を運んだ人もいたという。
安平町の早来地区と追分地区のほぼ中間地点に当たる安平地区、いわばまちなかにある同校は、地域と切り離せない関係にある。学校行事には地域の住民が参加し、地域イベントには児童や教職員が参加する。野球や書道など放課後のクラブでは、地域住民が先生になって活動を支えてきた。学校の学習と地域の交流、互いに足りない部分をカバーするかのように協力し合ってきた歴史がある。
同校の卒業生で安平第一自治会長を務める佐々木弘さん(74)は「学校と住民が一体となってまちづくりをしてきた。かつては教員住宅で暮らす先生もたくさんいたので、学校外での交流もあり、地域を盛り上げるためにお互いに手を組んでいた」と懐かしむ。
今年度限りでの閉校について「胆振東部地震の影響はあったと思うが、学ぶのは子どもたち。子どもたちがいい環境で勉強できることに越したことはない」と佐々木さん。ただ、上級生が下級生を支える小規模校ならではの良さに温かみを感じている町民の「残してほしかった」という声も聞いてきた。だからこそ「町や教育委員会には責任を持って、(閉校後の地域づくりに)対応してもらいたい。校舎も地域にとって活力になる使い方を望む」と訴える。
学校の歴史に幕が下りても、地域と共に刻んださまざまな伝統は決して色あせることはない。
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むかわ町、安平町早来地区の小中学校5校が今年度限りで閉校し、学校教育の場としての役割を終える。一方、早来地区では義務教育学校「早来学園」が開校し、新たな学びの場が生まれる。子どもたち、地域住民にとっての学びやとはどんな存在なのか、思いを聞いた。