新型コロナウイルス感染「第7波」の急拡大を受け、苫小牧保健所も業務の逼迫(ひっぱく)度合いが増している。「第6波」を踏まえて業務を重点化し、感染者への連絡を電話からショートメッセージサービス(SMS)に切り替えるなど効率化も進めたが、感染ピークが見通せず、職員の負担や不安は増すばかり。今後は胆振総合振興局や管内各市町の応援を受ける予定で、業務の遂行にあの手この手で工夫しつつ、市民に対策への理解や協力を求めている。
同保健所は約90人体制で、感染者への連絡や入院の調整、感染経路の確認など疫学調査、自宅待機者の健康観察をはじめ、各種情報のデータ入力や手続きなど多岐にわたる業務をこなしている。苫小牧市のみで週別感染者数が1000人を超えた「第6波」ピーク(2月)前後から、疫学調査の重点化、みなし陽性の運用などで機能維持を図りつつ、業務内容の改善や効率化を進めてきた。
感染者への連絡はこれまで電話だったが、3月以降は原則SMSで質問票を送付。健康観察も自宅療養者自ら健康管理する、国の専用サイト「My HER―SYS(健康状態入力フォーム)」を案内している。同保健所は「電話では子どものキラキラネームなど、名前の漢字を聞き取るだけでも時間がかかった」としつつ、「喉に痛みのある方などはSMSの方が負担にならない。質問票も簡単な形式で、状況をスムーズに確認できる。スマホがない方やリスクがあると判断した方には当然、電話で対応する」と強調する。
感染急拡大により対応の変更を余儀なくされ、市民に協力を求める場面も増えた。従来は感染者の同居家族に医療用抗原検査キットを配ってきたが、同保健所でも入手が困難になり、7月25日からキット送付を中止。業者に委託している生活支援物資の配送も、本来は3日間で自宅療養者に届けるところ、現在1週間はかかるという。「災害対策と同じように、日ごろから食料品や日用品、解熱剤などの薬などを備えてもらえれば」と訴える。
また、感染者が療養を終えて職場などに復帰する際、陰性証明書の提出は必要ないが、同保健所には「陰性を証明するためPCR検査をして」といった電話がいまだ寄せられるという。国は現在、療養開始の際も職場などは検査結果の証明を求めず、「My HER―SYS」で証明を自分で取得するよう周知しており、同保健所も「体調が少しでも優れない方は、まずは自宅で休むという理解が進んでくれたら」と期待する。
同保健所は「多くの人が重症化しなくても、感染者の母数が増えれば、重症化する人も増える。苫小牧市も過去最大の感染拡大になる可能性がある」と危機感を募らせ、今月から胆振総合振興局や管内各市町に応援を要請。「第6波」ピークでは道や振興局、管内各市町、派遣会社など応援1日30人前後で体制を強化し、敷地内に増員用業務スペースのプレハブを建てたが、業務の重点化や効率化を進めてきた今なお、感染ピークを見通せず体制の再強化を迫られた格好だ。
あす5日には保健所向かいの中央公園で、とまこまい港まつりが開幕する。同保健所は「イベント後に感染がさらに拡大しないよう、密にならないなど基本的な対策を徹底してほしい」と話している。